優樹(ゆうき)|それはさておき

フリーランスでwebライターをしている優樹(ゆうき)と申します。好きなことを好きなよう…

優樹(ゆうき)|それはさておき

フリーランスでwebライターをしている優樹(ゆうき)と申します。好きなことを好きなように書き散らかしています。

最近の記事

JAL516便事故で、炎上する機体から脱出した話(続き)

この記事は、以下の続きである。自分向けの記録の意味も含めて書き記すものです。 手荷物は全損です 事故の翌日、JALからの電話で起こされた。スマホには見慣れないフリーダイヤルの番号。事故のトラウマで眠れない、といったことは全くなく、ぐっすり眠っていた。明確な時間は覚えていないけれど、午前10時半くらい。電話に出ると、ものすごく腰の低い口調の男性職員だった。いや、女性だったかも。寝ぼけていて記憶が曖昧。 まずは、事故が起きたことに対する丁寧なお詫びを受けた。あと体調の心配と

    • JAL516便事故で、炎上する機体から脱出した話

      noteの更新を放置していた間に、表題の件が起こった。で、さらにぼんやりしていたら、事故発生から3ヶ月も経ってしまった。早すぎるよ流れ。時の。 noteの更新をサボっていたのは単なる怠慢なんだけれど、JALの件については気持ち的にもようやくひと区切りついた気がするので、稀有な経験の記録として書き留めておこうと思った次第。自分の記憶力に自信もないし。 いつも通り羽田に着いたはずだった 1月2日、新千歳空港15:50発。正月の帰省から東京へ一人で戻るところだった。飛行機に乗

      • 年末にサンマルクカフェにいる。

        12月29日。 鮮烈なまでに明確に、紛うことなき年末である。 本当だったら今頃、地元の田舎へ向かうべく空港にいるはずだったのに。でも、現在私がいるのは、中央線沿線にある駅前のサンマルクカフェである。 普段は混み合っていて、席を取るのも一苦労なここサンマルクカフェも、年末のせいか客足はまばらだ。あの人たちは皆、帰省したのだろうか。店内にいるのは老人ばかりである。 例年、親(てか父)からはいつ帰るのかしつこいほど聞かれていたものだった。自分で言うのも何だが、父は私のことが

        • 情に厚い人間になりたい

          このnoteをはじめたきっかけは、コロナ自粛であまりに暇だったからだ。 『コロナ日記』と題して、書き直し禁止を自分に課して。ただただ思いつきの勢いだけで文章を綴るのは、とても楽しい作業だった。 自粛なるものがどんなものか、当時はよくわかっていなかったけれど、だからこそだいぶ大層なものをイメージしていた。それこそ世界の終わり(a.k.a TMGE)レベルに。だけど、厳しい自粛はせいぜい2ヶ月くらいなもので、その後はまあまあの速さで普通の生活を取り戻していった。 そんなわけ

        JAL516便事故で、炎上する機体から脱出した話(続き)

          自己催眠通信講座

          どうも、今月から羽生善治になりました、羽生善治です。 そうですね今月から、はい。ずっとそうではあったんですけれど、このたびちゃんと認定を受けまして。それでなりました、羽生善治に。 どうやって。 そうですね、きっかけは3年ほど前に自宅マンションのポストに投函されていたチラシです。 なりたい自分になれる!自己催眠通信講座(12ヶ月集中コース) 自己啓発?いや、そんなものと一緒にしないでください。自己啓発なんていうのは、自分とひたすらに向き合って己の弱い部分をボコボコに叩

          一方その頃、彼らは(2)

          「封じ手は、8六歩です」 立会人である青野照市九段の読み上げを受け、羽生九段がするりと駒を滑らせる。第33期竜王戦七番勝負第二局が再開された。 入居者がレクリエーションルームに集まって体操しているころ、賢司は車椅子からテレビモニターを眺めていた。大きく映し出された羽生九段の手元。優男的なルックスに反して、厚みのある指をしている。 体操は基本的に全員参加だが、体操が嫌いな賢司はいつもその輪に加わらない。他の入居者の手前、担当である義隆はこれまで何度か誘ったこともあったが、

          一方その頃、彼らは(2)

          羽生九段、檜舞台の勇姿

          第33期竜王戦七番勝負、第一局。羽生善治九段が2年ぶりにタイトル戦の檜舞台に返ってきた。羽生九段 イズ バック。絶対王者の貫禄は相変わらずで、威厳と風格を纏ったその勇姿を一眼見た瞬間、じんわり涙が出た。あまりに神々しいものだから。 本局は、52手で豊島将之竜王の勝利となった。竜王戦七番勝負史上最短手数らしい。ネット界隈は軽くザワついていたけれど、個人的には手数と将棋の内容は別物と考えているので、「そんなこともあるか」てな程度である。 それ以上に、気になったこと。 挑戦者

          将棋×お笑い芸人で何かひとつ。

          ここ最近、著名人のご新規将棋ファンが増えているようで嬉しい限り。 中でも、お笑い芸人のサバンナ高橋さん。Twitterのツイートから溢れ出す将棋への興味と好奇心がものすごい。新しい「好き」を見つけた人のお手本みたいなハシャギっぷりである。かつての自分を見ているかのよう…。 ただ驚くべきは、将棋に興味を持ってからの展開の早さ。2020年7月のYoutube配信で藤井二冠の将棋ゲームをプレイしていたことから推測し、その辺りから将棋が気になっていたと仮定しても、そこから中継を観

          将棋×お笑い芸人で何かひとつ。

          隣りの芸人、吠える。

          午前中、高円寺住民は全員まだ寝ている。全員だ。 私がベッドでようやく右目を開けた(私はいつでも右目から目覚める)のも、12時を1時間ほど過ぎた頃だった。おはよう、平日。 起きたところで特にやることはないけれど、目覚めてしまったのでとりあえずベッドから降りる。やることないならいちいち目覚めなくていいんじゃないのか。と考えながら、パンを焼く。朝食の。 15時頃、適当に着替えて家を出る。駅を目指す。やっぱ隣駅を目指す。ガード下をひたすら阿佐ヶ谷へ向かって歩く。赤提灯の飲食店、

          羽生九段、初めてタイトル戦に挑むの巻

          羽生九段がタイトル戦に初出場羽生善治九段が登場する第33期竜王戦が、1週間後の10月9日に開幕します。 挑戦が決まった際の記者会見では、昨年1年間どのタイトル戦にも出場しなかったことについて質問が集中していました。 正直なところ、そんなことはどの棋士でも全くもって普通のことで、にわかの私は「たった1年間タイトル戦に絡まなかっただけで、こんなに言われちゃうんだな」と思いながらぼんやり眺めていたのですが、念のためググってみて戦慄しました。羽生九段、1989年の竜王挑戦以降、約

          羽生九段、初めてタイトル戦に挑むの巻

          フジイフェス2020

          本日、9月29日は”僕の好きなてんてー”こと藤井猛九段の50回目の誕生日だそうで。カレンダーに載っていないだけで、いわば国民の祝日です。 俳優でもミュージシャンでもアイドルでもアニメのキャラクターでも、最近は自分の好きな人の誕生日を「生誕祭」と称して盛大にお祝いする風潮がありますね。好きな画像を流したり、熱烈な愛を語ったり。中には手作りケーキなんかを披露する人も。まさにお祭り状態です。 そして、ついに今日は全藤井九段ファンが1年待ちに待った「藤井九段祭り」の日。Twitt

          久保九段のアウトロー的ルックに痺れる

          スポーツ総合誌Number初の将棋特集「藤井聡太と将棋の天才。」が、大きな話題になっていましたね。 増刷に増刷を重ねて、累計23万部を突破とか。日本中が沸いた2019年ラグビーW杯特集の累計17万部を大きく超える発行部数だそうで、異例の大ヒットとなったようです。 これまでにもNumberには、単発で棋士の記事が掲載されたことが何度かありました。中でも藤井猛九段の記事が掲載された号は私の家宝なんですが、現在はネットでも読めるようになっていますね。いい仕事するなぁ。 Num

          久保九段のアウトロー的ルックに痺れる

          6年後が待ち遠しい(JT杯感想)

          第41回将棋日本シリーズJTプロ公式戦2回戦、藤井聡太二冠が豊島将之竜王に敗れ、準決勝進出を逃しました。 藤井二冠と豊島竜王はこれまで公式戦で4回当たっていて、いずれも豊島竜王が勝利しているんですよね。複数回対戦した棋士の中で、藤井二冠にストレートで勝ち越しているのなんて、豊島竜王だけじゃないでしょうか。 今回の敗戦により、藤井二冠は連敗記録を一つ伸ばして5連敗となってしまったわけですが、こうした壁となる存在がいた方が戦いとしては断然面白いに決まっているので、負けたことは

          6年後が待ち遠しい(JT杯感想)

          タイトルホルダーの品格

          最近、仕事が入ってきてnoteが書けない。仕事なくて暇だから書くのがいいのに。ベーシックインカムはよ。 … 2020年8月18日、藤井聡太棋聖が木村一基王位に勝利し、新王位となった。先月のタイトル初戴冠からおよそ1ヶ月で、藤井二冠となったわけです。 「初めての2日制&七番勝負でストレート勝ち」とか、「史上最年少(18歳1ヶ月)でタイトル二冠&八段昇段達成」とか、「封じ手がAIも読めてなかった一手でしたよ」とか。 特筆すべきすごいことは枚挙にいとまがないわけですが、それを

          タイトルホルダーの品格

          「タイトル通算100期」が見えてきた

          第33期竜王戦決勝トーナメント、羽生善治九段が梶浦宏孝六段を下し、挑戦者決定三番勝負への切符を手に入れた。 いやったーぃ。 2019年、羽生九段は1年を通してタイトル戦に登場することはなかった。一般的にはごく普通のことだが、皆さんご存知のように羽生九段は普通じゃない。普通じゃないから、将棋界はこのニュースにざわついた。羽生九段がタイトル戦に出ないなんてことがあるなんて…。 羽生九段がタイトル戦に絡まなかったのは、1988年以来だそう。ちょっと意味が分からない。逆を言えば

          「タイトル通算100期」が見えてきた

          僕の好きなてんてー

          スマートフォンの待ち受け。 2年前から変えていない、宝物の一枚。 憧れの棋士に初めて会って、並んで一緒に写真を撮ったんだ。 第89期ヒューリック杯棋聖戦第2局、前夜祭。会場は羽生善治棋聖、そして挑戦者である豊島将之八段のファンの熱気で溢れかえっていた。会場時間より随分前に到着してしまった私は、比較的前方の座席を確保してゆっくり腰を下ろす。掌の中にあるミラーレス一眼カメラが、少し火照った手に冷たくて心地よい。この日のために購入したものだ。 おもむろに、隣りにいた20代半ば