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空と間のある都心

海外からの観光客が皇居を見て驚くのは、エンペラーが住まう場所が、ほぼ何も無い空間であることだ、と聞いたことがある。どれだけ壮麗な宮殿があるのかと思いきや、建物らしきものは質素なものが数える程で、目に映るのは古来からの姿を留める木々や草花だからである。

昭和天皇の御発意によって整備されることになった二の丸雑木林。武蔵野の昔からの自然が復元されています。

20年ごとに木を切り、適度に人の手が入ることで維持される植生です。今は新緑の季節、花よりも若い緑に癒されます。

案内も充実しており、まるで生きた博物館です。

親切に気になる植物の名前が表示されていることもしばしば。

今の時期は、あちらこちらの陽当たりの良い場所で、ヤマツツジが咲いていました。

美しさを実現するには、時空を見通してきちんと設計される必要があります。行き当たりバッタリではなかなか作り出せないし、偶然出来たとしても継続させることは困難だからです。

また、花や若葉にこの瞬間出逢えるのはタイミングという意味で確かに偶然であり一期一会ですが、自らの関心があってそこに目が向きます。決して偶然、目に映っているのではないのとすれば、必然と言っても過言ではないのではないでしょうか。

昭和天皇が侍従に傍らの草の名を訪ねられ、雑草でしょうとの応えに対し、名の無い草は無いと仰られたというエピソードを聞いたことがあります。心の美しさ目に見えません。美しい心を紡ぐのは、人が持つ日々の関心なのだと思ったものです。

そんなことをとりとめも無く頭に浮かべながら、初春の散歩を楽しんでいました。