総合商社の片隅から(16):商社マンは二度死ぬ

なんだか重ための記事が続いてしまったので、今回は軽めの内容にしたい。

記事のタイトルは、007の「You only live twice」の邦訳をもじってみた。

相当古い映画であり、Amazonプライム会員で視聴無料であった

もちろん、商社マンは決して諜報員(スパイ)でもなければ、ミッション・インポッシブルを遂行するような特殊部隊の隊員でもない。ショーン・コネリーでもない。

というか、そもそも、商社マン人生は映画じゃない。

のだが、「人生は太く短く」を地で行く情熱・猛烈タイプの人が多いというのも、巷間で広まる「商社マン像」というものだろう。

わざわざ商社マンの引き合いに007を持ってきたのは、映画の描写は娯楽目的だが、何らかのミッションを帯びて世界を駆け巡るところは、商社マン人生も007に近いからである。もちろん美女談義にも事欠かない。

職場で過去に出席した結婚式の話をする場合には、〇回目のという枕詞が付けて話されることが多い。先日、同年代を集めた集合研修に参加し、半生を振り返える機会があったのだが、出席者のうち約半分が再婚経験者だった。

007ではないが、商社マンもある意味記憶喪失になるくらい(=家庭崩壊を起こすくらい)の激務をこなさないと出世できない。島耕作じゃないが、家族も出世も両方を取るのは出来ない相談なのだ。私の同期も、仕事で評価されて出世している人ほど離婚率が高く、飲み会では慰謝料や養育費の相場談義で盛り上がっていた。(私個人としては、全く面白くなかったが)

橘玲たちばな あきらさんの著書によると、人間も生物としての生存戦略上、生殖コストの低い男性は子孫を残すために沢山の女性を相手にすることを志向し、生殖コストの高い女性は優秀な男性を選んで子どもを産む戦略を取るものらしい。自然のままでは人間もチンパンジー同様、一夫多妻制となるはずだが、西洋的な価値観が導入された結果、今の婚姻制度になっているとのこと。ところが、現在においても事実上の一夫多妻制が形を変えて維持されており、以前であれば妾や2号さんだったが、今では結婚と離婚を繰り返しながら沢山の女性に子どもを産んでもらうという形になるらしい。

決して賛同できない論評なのだが、私の観測の及ぶ範囲で周囲を見渡すと、50歳近くになっても15歳差の若い女性と再婚し、かつ子宝に恵まれる人もおり、残念ながら事実なのかもしれない。

ちなみに、かつて先輩の中には4回再婚された強者つわものもいた。5回目のご結婚の際は、定年間際での20歳代のお相手とで双子が出来たと聞いた。周囲からはよくも4人分の慰謝料を払えたとものだと言われ、凄い資産家だったのだろう評価されていた。

一方で、無理が祟って若くして亡くなる人も多い。若くして亡くなった商社マンの実例についてネット検索したところ、意外な記事がみつかった。やはり、商社マンは隙さえあれば人を楽しませたくて仕方がないエンターテイナー揃いだ。

その能力の発揮させ方次第では、浮世のうわさが絶えない人生模様が生まれると思うが、落ち着いたら落ち着いたで、あまり自宅にいて欲しくはない「亭主は元気で留守がいい」を地で行くタイプの人は多い。

亭主は元気で留守がいい
夫婦の間柄において、夫は家にお金を入れるだけで良く、常から家にいない方が妻にとって都合が良いということを意味する語。大日本除虫菊株式会社のCMのコピーから広がった言葉であり、1986年の流行語の一つにも選ばれている。

出典:Weblio辞書 https://www.weblio.jp › content › 亭主元気で留守が良い

タイに赴任してころの経験では、どうせ3年程度で次の任地に転勤になるので単身赴任し、家族は年に1、2度遊びに来るだけのケースが多かった。(その方が煩わしい婦人会活動を避けられるというメリットもある)

家族が遊びに来ても、多忙過ぎてメールに気が付い時には帰国していたという酷いケースもあり、よく離婚されないで済んでいるものだなと感心していまう。これでは、いてもいなくても同じではないか。

しかし、科学的な調査によると、残念ながら、夫に先立たれてもショックで早死にしてしまう女性は少なく、寧ろ元気にになる方が多いそうだ。

正直、男性の私にはショックな記事だが、めげている場合ではないだろう。やはり、偉大なるATM扱いされているだけということなのかもしれないが、人生は、何かを勘違いしている位のほうが幸せなのかも知れない。

世代ごとに価値観が変わっていく世の常として、巣立った子どもに対して親に出来る最良のことは「とっとと死ぬこと」なんだそうだ。

しかしながら、今は間違って100年も生きてしまう時代だ。

どうせなら、「商社マン」らしい生き方は過去形にして、一度死んだもの考え、新たな人生を自分で切り開いていくしかないのだろう。

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