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売りたいものは売ってはいけない

いま契約している生保の追加売り込みが酷くて閉口している。今入っている生保の1つが満期を迎えるからだ。担当者の個人成績が下がるのだろう、必死さが常軌を逸していると感じるくらいのレベルになっている。今日も、昼休みに、ランチボックスの入った手提げに放り込んでいた携帯電話が、袋の中で鳴り響いていた。取る気にもならなかったけれど…

昨年末、生保の営業担当者からSMSが届いた。そろそろ満期を迎える契約の手続き絡みの連絡かなと思って返信すると、とにもかくもアポ取りの依頼。最近、比較的暇だし、出社してるし、と思って応じると、頼みもしていない商品の売り込みのオンパレード。しかも、提案してくる商品が、よくファイナンシャルプランナーがネット上で「最もリスクが高く、そもそも保険として機能しておらず不要」と指摘している「豪ドルとかの外貨建ての変額保険」とか、「定年後も10年以上支払い続けてからやっと貰える個人年金」とか、不要ですとと言って外してもらったことのある「3大疾病特約」を大量に付けた掛け捨て保険とか、持病を抱えた妻向けの医療保険とか、まだ結婚もしてない子ども向けの個人年金とか、本当に意味が分からん。

これでも、わたし、煙草も吸わず飲み会も月1以下の野菜弁当健康生活を送っているですが。それでも生活習慣病である3大疾病で死ぬリスク高いんですかね。死ぬ前にもお金貰えて、お得だそうです。

ロビーのラウンジコーナーで金切り声を挙げて提案されると、驚いた周りが、そっと席を外す始末。凄い。これくらい無神経でないと営業職は務まらないのだろう。断られるのも仕事です、みたいな。

まったく意味を見出せない提案は断るしかないが、そもそも、なぜ嫌な思いをしてまで提案を聞き、断らり続けなければならないのか、辛い。理不尽ささえ感じる。自分の詰めの甘さや、押しに弱い軟弱さ、悪い意味でも優しさに付け入られているだけなのだが…

だた、金切り声の愚痴半分の話にも参考になる点はある。

こんな保険、買う人いるんですか?

と聞くと「いない」とのこと。正直で宜しい。

不正と思われるコロナ給付金の申請も多いみたいですね。

と、話題を向けると、受給申請処理に忙殺され、毎日残業。それでも追い付かず、電話口では「すぐ振り込まれる」と約款に書いてあるんですけど、と矢のような催促。約款に書かれた期日に間に合わない分は、利子を付けて支払っているそうだ。どこまで本当か、知らないが、話半分で聞いておく。

生保の営業職が典型例だろうが、ビジネスモデルが崩壊し始めていても、従来からのやり方に固執せざるを得ない人々というのは、どんどん厳しい世界に置いて行かれるという、現実が良く分かる。頑張っているのは分かるが、何も買うものがない、買う気も起きない。提案も迷惑過ぎる。

本当は、必要は必要な商品を本人に代わりにプロの目で探し出すなどして相談にのり、勾配サイトに誘導したり、本当に契約してもらったら、キックバックを貰うモデルが時代に合っているのだろう。但し、これで生活していけるだけの収入になるかは別問題だが。ネットでの比較見積りサイトで充分となる。これはこれで、あとから大量のDMが届き、煩わしいのだが。いずれにせよ、価格競争力の無い自社の商品しか売ることのできない売り子が悲惨だ。付加価値が付けるか、コスト競争力がないと勝負出来ないのだ。

社会ニーズに真摯に応えようと新商品を開発しても、すぐに真似されてしまう。同じ商品なら、安い方がいいし、マイペースで検討出来て、営業担当者に無理やり押し込まれているような嫌な気分も味あわずに済む方が良い。

一方、売り込む側からすると、世の中の動きに合わせて、売る商品を柔軟に変えていくなり、稼げる収益源が複数あってポートフォリオを組めるような人はいいが、そうでない人には明るい将来が見通せずキツイ時代だろう。転職市場が賑わうのも道理だ。

無理な提案の連続攻撃を受け、よくわかったのは

自分の売りたいものを売ってはいけない

ということだ。

年末に、見返りを求めず、大根を配りまくったら、とんでもないくらいのお返しを頂いた経験が、その確信を強くした。あれは、本当に見返りなど期待していなかったからこその結果だったように思う。結果として何か得したかった訳では決してない。見返りを求めているかどうかは、不思議と分かる。裏返せば、自分の為ではなく、相手のことを本気でとこまで考えているかということなのだろう。
単に大根を配ると言っても、貰ったら却って困るような人にはあげていないし、大きさだって、相手の家庭事情(何人家族か、子どもが大きいか、2世帯同居か等)を勘案しながら、ちょうど良さそうなものを選んでいる。

自分だって欲しいものをあげているのだ

多すぎなければ(大根も太いのが40本も採れなければ)、全部食べたいくらい。だから、売る商品も、自分の都合で売りたいものではなく、

買いたいものしか売ってはいけないのだ

営業職はノルマがキツイだろう。最後は、いかにお得かで訴求したくなる。要は、相手の「欲」で手を出させるのだ。でもそれは禁じ手だ。そういう近視眼的な損得勘定でなはなく、奥深いところで共存・共感できる関係性でいられる人たちを、普段から周囲にどれだけ築いているかが、本当の意味での勝負どころなのだ。

自分もそう思い直して、自分自身が生きやすい世界を、少しずつでも周囲に築きながら生きていこうと改めて思う。