Life is Fishing (第四章 前夜③)

伊勢海老のお造りを食べ終わったタイミングで、伊勢海老の味噌汁が2つ運ばれてきた。お椀から半分に割られた伊勢海老の頭が顔を出している。お椀から立ち昇る湯気が、味噌と伊勢海老の香りを運んでくる。
「これは絶対美味いやつだ。間違いない!」
「こんなにいっぺんに美味しいものを食べても良いんでしょうか?」
ウッシーが次から次へと訪れる幸福感に、耐えきれなくなっているようだ。
「確かに普段食べ慣れてない美味しいものが立て続けに出てくると、なんだか勿体ない気がしてくるね。」
ウッシーがうんうんと頷く。
「でも、良いんだよ。僕らは繁忙期の仕事頑張った!そのご褒美だ。また仕事頑張って、ご褒美で美味しいものを食べれば良いよ。」
二人で伊勢海老の味噌汁を啜る。伊勢海老の出汁の出方が凄い。普通の海老よりも深く濃く海老である事を主張してくる。味噌との相性も抜群だ。頭の殻についているミソも、濃厚な海老の風味が凝縮されていて、美味しい。
「ヤバいね。」
「…ヤバいですね。」
あやうく今回の旅の目的を達成したかのような気分になるところだった。このまま釣りをせずに帰っても、十分な満足感を得られるかのような衝撃を受けた。
「…伊勢海老は人間をダメにするかもしれない。とりあえず、貝も食べよう。」
焼き上がったはまぐりとホンビノスを取り分けているところに、刺身定食が運ばれてきた。
伊勢海老のお造りや味噌汁は大変美味かったが、マグロ、タコ、鯛とイサキなどのお刺身の定食も十分美味しかった。中でも、タコは歯応えが凄くて味が濃厚だった。女将さんいわく、タコは生のまま凍らせてしまうと歯応えが弱くなるらしい。スーパーなどで売られているタコはこの状態のものだそうだ。生で凍らせずに茹でると、歯応えがしっかりしたタコの身になる。この店では、定食のタコはもちろん、土産物の冷凍タコも、一旦茹でてから冷凍しているため、歯応えを楽しめるようになっているとの事だ。
僕らはご飯をお代わりして、刺身定食をペロリと平らげてしまった。食事を終えて、女将さんに会計をお願いする。全ての食事がとても美味しかったと二人で褒めちぎった。
「ウッシー、このお店は大当たりだったね。明日のお昼でもまた来ようよ。」
「そうですね!ぜひ!」
大満足のお店だ。次また大原漁港に釣りに来るときも、ぜひ使いたいお店だなと思った。

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