見出し画像

エドワードの子育てについて考えるーバディミッションネタバレ考察②

前回の①の記事ではルークが抱えているトラウマについて考えました。
今回はそのルークの父親、エドワードの子育てについて考えます。
前回同様ネタバレありですので、気にならない方だけお読みください。

ルークとエドワードの出会い

どの口が言うのか

孤児だったルークは8歳の時にたまたま自分を助けてくれたエドワードに引き取られます。表情に乏しく、ぼそぼそとしゃべる少年ルークは、エドワードの暖かいかかわりによって心を開いていきます。この過程はルークの回想を通して何度も、丁寧に描かれていきます。クリア後に振り返ってみれば、何度もエドワードの正体に関する伏線が張られていたのがわかりますけれども…そんなこと考えたくもなかった、というのが初回プレイの私の感想です。それくらい、エドワードの子育ては完ぺきで、ルークを救ったように見えました。

エドワードとは何だったのか

良いこと言うんですよね

エドワードがルークを引き取ったのは、自分の計画を実行するためであることが作中に明らかになります。初めから本当の父親になるつもりはなく、ルークの子育ての傍ら自分の計画のための犯罪組織を作っています。その犯罪組織がかぎつけられそうになると、「殉職したことにして」ルークの前から姿を消します。アナザーエンドを開放することでみられるエピソードの中で、エドワードは自身の生い立ちと、なぜ計画に至ったかについて語ります。それによれば、彼にもトラウマになるような過酷な経験が何度もあること、彼には「感情がなく」「自分がやったことなのに他人事のように感じる」ということがわかります。エドワード自身は「感情がない」といいますが、感情がない人間には他人をあんなに完ぺきに演じることはできないでしょう。ルークと同じように、トラウマがあり、その後遺症で感情を自分で感じることができない、というか感情をまともに感じていたら生きていけなかったでしょう。ルークもエドワードも過酷な生い立ちの中でトラウマティックな経験をし、後遺症があるのは同じなのですが、しかし二人は全く異なる大人になりました。

ルークとエドワードを分けたものーエドワードの子育て

ルークの感情は父からもらったもの

ルークががあのような明るい好青年に育ち、エドワードは他人に化けてうそをつくのが異様にうまい実体のない存在になった(ファントムとは本当に言いえて妙です)。この差はいったいどこから生まれたのか。ルークの生来の性格や生き抜いた環境の影響ももちろんありますが、大きな違いはルークにはエドワードがいたからだと思います。逆に言えばルークもエドワード化する危険性がありました。8歳の火事の時、ルークは無気力でぼそぼそとしゃべる、生来の明るさや強さとは全くかけ離れた子どもになっていました。孤児院では大切に扱われず、我慢ばかりしていたのです。あのまま育っていたらルークは(アーロンのように)ヒーローなんか目指さなかったでしょうし、甘いものが好きだと自覚することも、バスケという趣味もなかったでしょう。それらは全部エドワードがくれたのです。エドワードは下心があってルークの父親になりましたが、下心があったからこそ表面上は完ぺきな父親になりました。この完ぺきというのは、いい加減なところがあったりぞんざいなところがあったりする普通の父親を完ぺきに演じたということです。エドワード自身の語りによれば温かい家庭を知らずに育ったようで、それが本当なら、映画とか小説とか、あとは心理学の本とかを読んで、暖かい父親について勉強したのでしょう。泣けますね。
だとすると芝居がかった大げさな感じも納得できますが、でもルークには大げさなくらい愛情を示されるのが良かったのでしょう。トラウマ体験をした人に必要なのは、何よりも安心安全な環境です。陽気な警察官の父親は最高に安心できる存在だったでしょう。そしてエドワードと情緒的な絆を結ぶことでルークは本来の自分を出せるようになりました。トラウマ記憶のほうはエドワードが夜な夜な催眠でつついていたので悪夢という症状が残ったままでしたけど、少なくとも意識的な部分についてはルークは立ち直ることができました。父の愛情が偽りだっと知りルークは絶望しますが、最終的には「あの時の自分には必要なことだった、確かに自分は救われた」と振り返ることができるようになります。偽りであっても(意図はどうであっても)、その人にとって本当に必要なものをあげることで結果的にその人は救われることがあるというのは、なんというか示唆的です。

ルークの明るさとヒーロー性

エドワードが死んだとき、ルークはまた一人ぼっちになってしまったという絶望があったでしょう。しかしエドワードとの心理的な絆を確認し、ヒーローを目指すという目標を背負うことによって、本来感じて当然のはずの落ち込みから自分を守りました。物語開始時点の25歳のルークは8歳以前の回想のルークとも、エドワードと暮らして明るくなった10代のルークともちょっと違って結構お茶目でハイテンションです。チェズレイに笑われるくらい表情豊かです。ゲーム中の選択肢にもよりますがボケも突っ込みも全力で、ヒーローというよりは三枚目キャラに見えます。

かわいいルーク

全部クリアした後で考えてみると、このルークのハイテンションさは、エドワードのいない悲しみを感じないようにするための防衛のように見えてきます。ルークが生きていく上でどうしても必要な防衛です。切ない…。だけど物語が進み、エドワードの愛情が偽りだったと知り、ルークは今度こそ本当に父親を失い絶望します。そのルークを救ったのが、自分自身で見つけた仲間との絆だなんて最高にエモい…。そして本当に立ち直ったルークはすべてを、自分をだましていた父親さえも救おうとする。命を救われたエドワードは、かつて自分がルークにそうしたようにルークが幼い自分を救いに来るという夢を見てるんですよ。

結構素直なところもあるエドワード

さらに自分には感情がない、自分に起きた「不思議な感覚」について説明できないというエドワードに、ルークは泣きながらこう言うのです。


「いつか、きっとわかる日が来る。 そう信じてるよーー父さん」

エドワードはひどいことをたくさんしましたけど、でも嘘でもルークを救ったことで、結果的に自分が救われる道ができた。その救われる道は、自分の罪と向き合ういばらの道です。感情がわかるようになるというのはそういうことだと思います。ルークはそのいばらの道を優しく、でも進めるようになるよと言っているように見えました。またこのエピソードのタイトルが「幻影を現実に」本当にそうだよね!私的にはこのラストで心をわしづかみにされました…

感想というかなんというか

このゲームは人間関係の濃さの質がすごい。考察というか妄想になってしまいましたけど、そういう妄想をすることのできる深さがあります。
しかもまだ語り足りない。今度はチェズレイについても語りたいと思います!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?