Why Divorce Cases Involving Allegations Of Abuse Still Confound Family Courts 日本語訳2/4

ほとんどのカナダ人は、子どもがいるような場合でも、裁判まではせずに離婚(注:カナダは同性婚なども可能であるため、原文ではformal unionとされているものと思われるが、ここでは端的に離婚と訳した)することができている。裁判を起こすのは約20%、長期間の訴訟になるのは5%に過ぎない。
家庭裁判所の仕組みは不自由なもので、法的援助の資格を有しない場合は自費で弁護士を雇うか、自分自身で手続をする必要がある。費用面の問題が、離婚を希望する当事者が裁判外で解決する現実的な圧力になっている。
裁判で解決した少数の事例は、家庭裁判所の仕組みによって「高葛藤事案」ち名付けられる傾向にある。このような名称は1970年代後半から80年代前半にかけて出現し、当事者間に永続するつらい紛争を抱え、慢性的に相互交通ができなくなっている離婚のことを示している。これは、両親の紛争が継続すると子どもに悪影響が出るということを示す研究に答えてのものである。この用語は、子どもの福祉に悪影響を与えうる兆候が認められる事例に対する支援が必要であることを意味している。DVのみに限定されるものではない。
カナダの至る所で、家庭裁判所は多くの関係者の中で紛糾している。何百という弁護士、裁判官、児童福祉司、調査官(後ろ二者は我が国の制度上もっとも近いものに置き換えた)などである。この制度では、DVの主張がある際に、手続が長期化するものであり、とりわけ親権や面会交流が争点となっているときは尚更である。これは一面においては、離婚当事者に高頻度でDVが認められるという事実を認めようとしない、性差別主義者の文化的な流行であったり、性別役割分業間に立脚した、DVの現実だったりといったものに起因している。
結果的に、この高葛藤事案という区分は広範に適用されすぎていて、本当に危険な事案が、あまり紛争性のない事案と十把一絡げにされている。高葛藤事案というくくりが乱発されることで、暴力や力の不均衡、威圧的な支配の構図に直面する女性や子どもの安全が脅かされている。
ニューブランズウィック大学で家庭内暴力の研究をしているリンダネイルソンは、「これは、DV教育や私たちが1970年代以来行ってきた取り組みに対する過剰な反動であると考えています」という。ネイルソンは1970年代後半から80年代前半にかけて家族法を制定し、彼女が言うには、そこでは家庭内の紛争が子どもに与える影響に特に主眼が置かれているという。現在では、家族学の教授としてMuriel McQueen Fergusson家庭内暴力研究センターの研究員をつとめ、30年以上にわたって家庭内暴力と家族法の研究を行っている。
ネイルソンは、刑事法廷で堂々と裁かれるDVがある一方で、家庭裁判所は虐待の現実や、虐待が女性や子どもに与える影響について、遅々としてこれらを取り入れてこなかったという。何十年にもわたって証拠にもかかわらず、虐待的な家庭から逃れた女性については、虐待的な配偶者から逃れようとすることが加害の危険を増大させるという通説に対して十分な考慮が払われないまま、手続が進められている現状がある。カナダでは、配偶者から別れた女性達は結婚している女性に比較して、身体的な暴力や傷害を多く経験している可能性があり、殺される可能性は約6倍である。子どもに対する加害の可能性もまた、DV加害者が配偶者と隔離されたときに増大する。
カナダ家庭内殺人防止学会によると、両親の別離と虐待の体験は、DVに関連した子どもに対する家庭内殺人の2大要因であるという。親権を巡る紛争も、これに加えてリスク要因である。毎年カナダでは、約30人の子どもが親に殺されている。母によるものは約40%であり、精神疾患や産後うつによるものがそうでないものより多い。残りの60%は父によるもので、怒り、嫉妬や離婚に対する報復というのが通常みられる動機である。
CDHPIは、オンタリオ家庭内暴力死亡事例調査期間を含む、家庭内殺人を調査する6つの団体の調査結果をまとめることで、防止策を開発し、改良しようと取り組んでいる。2003年から2018年の間に、DVDRCは地方におけるDVによる死亡事案329例、470人の事例を調査・検討した。
構成員であるピータージャフェは、45ねんいじょうにわたって家庭内暴力の研究をしている。彼はDVDRCの業務を飛行機の墜落事故の調査になぞらえる。「どこに問題があったのか、パイロットに問題があったのか、天候の性だったのか、機材の問題だったのかを明らかにしようとしているのです」とロンドン西部大学で女性や子どもに対する暴力に関する研究教育機関を率いるジャフェはいう。
研究によって、通常は、多くの要因が一点に集まる様子が明らかになる。しかし、ほとんどの家庭内殺人は、2つの共通点を有している。ひとつは、虐待が存在したこと、もうひとつは、実際に別れているか、別離を巡って係争中であることである。

続く

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