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小説とか詩とか

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瑞野が書いた小説や詩をまとめています。短編多め。お暇な時にぜひどうぞ。
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2022年5月の記事一覧

詩『高速バス』

重たいコートを着ないと寒い 藍色の裾を風に揺らす 履きつぶれかけた靴と共に 妙に新しい青のリュックを背負い 探しているものはなんだろう 新しい自分かな 知らない世界かな もしくは君の面影なんだろうな バスは走る 裸の大地を 実りを終えた里を なだらかな坂を越えて 手の届くサイズの未来へ ポケットにしわくちゃの折り紙 渡せなかった過去の想い 薄くなった鉛筆の線と 遠ざかった記憶の面影 手にしたものはなんだろう 確かな知識かな 尊い生涯の友かな 永久に愛すべき人を失ったの

小説『introduction』

「じゃあ、定期ライブお疲れ様でしたー!」 グラスが一斉に高鳴る。天王寺にある古ぼけた居酒屋。いつもサークルでライブを開催した後、決まってここで打ち上げを行う。今夜も、狭い座敷に部員がすし詰めになって酒を飲みかわす。 俺はいつも絡むサークルの仲間と話す。 「・・・どうなんだよ?卒業したらどうするんだ?」 「んー、まあ、音響関係の会社で働くかな」 「バンドは?」 「無理無理。プロで食っていけるほど才能ないし」 「けっ、お前もそれぐらいの奴か・・・」 俺は思わずがっかりしてしま

¥300

詩『エンディング』

簡単に終わる恋じゃないって 俺はきっとたかを括ってたんだろうな 余裕モードだった自分に天罰下って 自分のせいなのになんか腐ってしまう 日付回って1時過ぎ ようやくベッドに入った時に なんか足りないなぁってちょっと思って いつもの電話がもう来ないこと気づいた きっとそうなんだろうな 思いもよらない展開って絶対あるんだよ そういえば昔見た洋物の映画 エンディングが唐突で消化不良だったな それでもこのストーリーは続く どうしようもない男のライフはまだ残ってる この胸が鳴る限り

#2000字のドラマ_小説『スターライトマイン』

梅雨の晴れ間、晴れた空に洗いたてのシーツが映える。ひらひらした布は風に乗り、雲のようにふくらむ。あー映える。ほんとに映える。インスタにでも載せたい光景。 でも、今の私はそんな気分じゃなかった。 っていうか、そもそも仕事中だし。 「よかったわねー。天気が良くて助かったわ」 「洗濯物、片付きましたね」 私は保育士。春から大学を卒業して保育園で働きだしたばかり。先輩の先生方に助けられながら、慌ただしい毎日を過ごしている。 時間は昼過ぎ。昼休みが終わって、遊び疲れた子どもたち