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小説とか詩とか

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瑞野が書いた小説や詩をまとめています。短編多め。お暇な時にぜひどうぞ。
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2022年2月の記事一覧

#140字小説『key』

Twitterであの人と同じ名のアカウントを見かけた。鍵が掛かっている。もう二度と出てこないでほしいのに。頭に浮かぶのは憎たらしくて、でも自分より透き通った瞳をしたあの人の笑顔ばかり。あの日分かれた道を、今も私は顧みてばかりいるの。 ねぇ、また笑ってみせてよ。褪せたフレームの中で。 [了]

#140字小説『Starting Over』

一人一人に「今までありがとうございました、またどこかでお会いしましょう」と伝えていく時の胸の切なさは、言葉にできない。本当はずっとここに居たい。でも、時間は待ってくれない。空っぽになった部屋の鍵を締め、硬い革靴で地面を踏み締める。 見慣れた街から、 最初で最後の電車が走り出した。 [了]

詩『Nobody Knows』

子供の笑い声、大人の話し声 軋むレール、街頭広告、車、バス、信号 すべての音が交差していくこの場所で 私はひとり空を見上げる 雨雲の切れ間から差す光明が スポットライトのように街を照らす 差していた水色の傘を誰かが見ていた もう降り注ぐものは何も無かった 誰かのために何かできただろうか これまでの道を振り返るけど もう足跡は掠れて見えなくなっていた 濡れたアスファルトを西日が照らして 水溜りを空に戻してゆく そんな感じで私の心も 綺麗に報われたらいいのに 晴れた空に差