ささやかな飯テロ 19:安い鯛めし

アラで作る鯛めし

『アラという魚』と『魚のアラ』
入れ替えるだけで全然意味が違ってくるが、今回は後者、魚の『粗(あら)』、鯛のアラで、美味しい鯛めし作ろうぜ、というお話。

スーパーの鮮魚コーナー、地域性や会社の方針によって異なるが、異様に充実したお店を見つけると嬉しくなる。
下手すりゃ、死んだ魚が並んでいる店頭が、生きた魚を展示している水族館より魅力的な店すらあるが、不思議と、こういう店は生臭くない。
もちろん、魚独特の匂いはあるが、臭いではないところが1つの見極めポイントだ。

そういうお店でアラを買おう。

頭と、三枚おろしのした中骨、ヒレの部分がパック詰めされているようなもの。
立派な鯛でも、数百円で買える。
もちろん、その価値をよく知っているのか、もしくは売れるのか。
思ったより強気の価格が設定されている店もあるが、その店に並ぶパックの刺し身より安価なのは間違いない。

買ってきたアラを洗おう。
かなり鋭いので、ヒレとか中骨とかで手を怪我しないように注意しながら、流水で洗う。
ウロコは取る必要ないが、血とかエラとか、要は血のような赤い部分は取り除く。
また、血合いだの骨の髄といえる部分の赤黒いところも取り除く。
これらは手で洗っても良いが、古い歯ブラシを1つ用意しておくと作業が捗る。

洗ったらキッチンペーパーなどで水分を除き、調理用のバットや大きめの平皿に並べ、上から、少し多めに塩をふる。
浸透圧の関係で水分が出てくるが、この時、臭みの元もそこそこ出てくる。
要は、外界との接触するところから温度が上がって分解が進むので、どうしても、表面には臭み成分が多くなる。
これを水分と一緒に出してしまおう、というのがこの振り塩の儀式。
10分くらい置いておけば、汗をかいたような状態になるので、これをキッチンペーパーなどで拭き取ろう。

ちなみに、魚の臭みを取る方法は、ネットでも多々見かけるが、要は臭みを取る必要があるような魚だから必要なのだ。
熱湯を使う方法もあるにはある。
ただ、臭みが取れるかも知れないが、それだけでなく、タンパク質が固まってしまうので、その手法は、焼いたり煮たりするような場合に使う。
今回は新鮮な魚のアラなので、部位が部位なら刺し身で食べられる鮮度であることを忘れちゃいけない。

魚肉にせよ畜肉にせよ、出汁を意識する場合は、水からコトコトと煮出す。
鍋にアラを入れ、浸る程度に水を入れれば、おおよそ1.5リットル前後じゃなかろうか。
ここに大さじ2杯くらい日本酒を入れ、もしあれば、名刺2~3枚分の昆布を入れる。
なければ、後から味の素を振りかければよろしい。
グルタミン酸はイノシン酸の良い相棒です。

煮立ってきたら、煮立たせなように火加減を調整し、そのまま最長30分程度を目安に煮出し、火を止める。
その後、火傷しなくなる程度に冷めたら、アラを取り出して魚肉回収の作業をする。

中骨やヒレ周りに身があるのは見て分かるが、頭にも、結構な身がついていることに驚く人もあろう。
目の周りは、ほぼ身だし、頬の部分など、完全に『食べる部分』と認識するレベルだ。
しばしば『魚の骨』として枝みたいな体の部分に、頭の骨が描かれたりするが、あれは魚をきちんと食べたことがない人が描いたんだろうなぁ、という気になってくる。
何はともあれ、出汁が冷めるまでの間、コツコツと解体作業を続けよう。
これが、鯛めしの『身』になる。

出汁が冷めたら、こちらを使って炊飯をする。
米1合につき、薄口醤油大さじ1、酒大さじ0.5を加えれば良い。
今回、炊き込みご飯で甘みを出すためにマストだと言っているニンジンを入れない代わりに、酒の量の半分程度のみりんを入れる。
鯛の身は炊飯前に入れない。
炊きあがったら、入れて混ぜる。
多分、入れて炊き込んでも美味しいけど、あえて後入れで。

実際に食べてみると、鯛の出汁がほんわりと香り、端的に言えば美味い。
単純にご飯を炊いただけだが、その出汁を魚のアラで取るというのは悪くない発想だろう。
ちなみに、アラを水に入れる前、グリルなどで焼いたものを入れるパターンもある。
香ばしさが入り、これはこれで美味い。

それなりの量の水を使ったので、出汁は炊飯で使い切っていない筈だ。
せっかくなので、これで味噌汁を作ろう。
鯛の出汁で作った味噌汁、ちょっと贅沢、具材にはわかめをオススメする。


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