ささやかな飯テロ 18:コーヒーを淹れる

ドリップコーヒー

最初は形から、と思って手に入れたコーヒーミル。
いわゆる豆をガリガリするタイプだが、そんな淹れ方を始めて30年以上は経っている。
うん、オッサンだな。
とりあえず、毎日淹れている訳じゃないが、ドリップ歴30年、と言い切っても誰も文句を言わないだろう。
そして思う。
巷で、高級そうな顔してドリップコーヒーを語っている人とは相容れないわ、と。

ああいうのが好きな人はそれで良いが、こちとら、そういう面倒くさいのは好きじゃない。
簡単に美味しく飲めればいいと思っているので、それっぽいお作法を求める方、もしくは、そういう界隈からのツッコミを入れるのを生業とされている方は、この先、読んでも価値はありません。

そもそも、熱湯で淹れるとコーヒー豆が煮える、とか言っているが、180℃だの200℃だのの高温で焙煎した豆が100℃で煮える訳ねーじゃん、って言うとバカにされるので言わないが、温度による溶解度の差で、抽出速度と順番に差が出る可能性はあるものの、お湯の温度は、それほどこだわらなくても良いと思ってる。
もし、こだわるなら、80℃か100℃か、という感じで20℃くらいの温度差であり、98℃だ95℃だ、という数℃差に強く拘る必要はなかろう。
そもそも、室温との温度差のため、猛烈な勢いでポット壁から熱が放出される中で、1点だけ測定した温度が、その容器内全体の温度であるはずもないので、科学的な視点が欠落した人の自己満足か言い訳じゃないかと思っているが、その『こだわり』に商用価値があるなら、それはそれで否定しない。

なので、熱湯でも構わないと思っているが、通っぽさを演出するなら、熱湯が用意できてから、ペーパーフィルターをセットすると良いだろう。
その準備の時間、1~2分もあれば、『熱湯』が『先ほどまで熱湯だったもの』に変わり、かつ、その温度は分からずとも、コーヒーを淹れるのにちょうど良い感じ、と言われているレンジに入る。
「このセットしている時間で、ちょうど良い温度になるんですよ」と添えれば良い。
逆算すると、お湯を沸かしている時間を利用して豆を挽くと良いが、これらを一連のルーチンとして覚えておくと、合理的で、かつ、こだわり強めっぽい印象を演出出来る。
水をセット→点火→豆を挽く→沸騰したら火を止める→ペーパーフィルタと豆をセット

ドリップする場合、蒸らし時間は必須だ。
挽いた粉の隙間が乾いている状態では、お湯は浸透しないので、軽くでも湿らせておく必要がある。
少量の直接のお湯、もしくは、蒸気によって蒸すイメージ。
オッサンが分かる例えなら、床屋の顔剃り。
あの前の蒸しタオルが気持ち良いでしょ?
あれと同じです。

蒸らし時間は30秒くらい。
コーヒーのドリップに特化した30秒タイマー、というのがあれば便利だと思うが、こういう狭いニーズのものは見かけないので、自分で作るしかない。
時計を見りゃ、それで済むが、私の場合、iPhoneのオートメーションでRFIDタグと30秒タイマーを組み合わせたものを使っていて、これは便利だと自画自賛している。

その先のお湯は『出来るだけ細く』という流派があれば『出来るだけ速く』という流派もある。
ね?
もはや、淹れる人の好みの問題で、そこに唯一無二の正解はないんですよ。

ポイントは1つ。
お湯をコーヒー豆に通すこと。

何を言っているんだ?と思われるが、あまり勢いよく注ぎ込むと、コーヒーの粉が懸濁するだけでなく、ペーパーの壁に貼り付いたものが剥がれて『穴』になる訳ですよ。
穴というと大袈裟だが、要は豆の層が薄いところ、すなわち、お湯が通るのに抵抗が少ないところが出来てしまうので、お湯は優先的にそちらから流れちゃう訳ですよ。

もったいない。

かと言って、荒らさぬよう、慎重に注いでいたら、いろいろな味が混じった上に、ドリップし終わる頃にアイスコーヒーになってしまう可能性があるので、適度な速さで荒らさぬように注ぐのがコツなんですね。

巷のお作法を眺めると、『最初にある程度勢いよく注いで、少し休ませてからさらに』というパターンと『荒らさぬように緩やかに』というパターンに分けられるが、前者はペーパーの壁面に出来るだけ広くコーヒー豆の層を作るタイプ、後者は下の方に集めるタイプですかね。
前者だと、お湯とコーヒー豆の接触面積が増えて、かつ、お湯が通る層の厚みが薄くなるので、雑味の少ないさっぱりとした味に仕上がります。
後者は、お湯が通る層が厚くなるため、しっかりとした味に仕上がります。

どちらが好みか、というより、この形をイメージしておけば、自分が飲みたいと思ったタイプのコーヒーを淹れ分ける事が可能だし、少なくとも、自分で飲み比べてみて「ああ、こうなるのか」が分かればOK、誰にも文句は言えないだろう。

何を入れて飲むか?
砂糖を入れるとか子供じゃあるまいし、などと言う界隈があるが、好きに飲めばいい。
個人的には、さっぱりドリップをブラックで飲むのが好きだし、しっかりドリップに牛乳を入れるのが好きだ。
その際、コーヒーフレッシュと称する植物油の懸濁物じゃなくて牛乳がオススメ。
百歩譲って、粉末なら『クリープ』一択だ。
同じような白い粉でも、クリープは動物性、その他は植物性ということは、意外と知られていない。
逆に「ブラックコーヒーを無理して飲んでいる」という界隈があるが、あれは、どういう心境なんだろう。
令和になっても、ネット上で見かけるがネタとして楽しんでいるんだろうか?
それがネタだとしても面白くもないので、よく分からない。

ところで、ブラックで飲むと、その賞味期限の短さに驚かされる。
カップに放置して30分も置いておけば、いくら味覚音痴でも酸味を感じるだろう。
コーヒーは、ドリップした瞬間から酸化との戦いと言われているが、だから、缶コーヒーはミルクっぽいものや砂糖や甘味料を放り込んで誤魔化している。
ブラックは誤魔化しようがないのだ。
UCCの缶コーヒー、BLACKはよくやってると思う。
一方、ジョージア、おまえはダメだ(※個人の好みの問題であり、否定するものではありません。)
また、挽いた粉を買ってくるより豆で買った方が良いのも、酸化が理由になる。
粉のやつ、コスパは良いけど、香りは抜けてるわ、酸化してるわ、もはやインスタントを買った方が良いんじゃないかと。

もちろん、インスタントOKですよ。
ドリップとか面倒くさいや、と思うのは当然ですし、プロが淹れた美味しいコーヒーをフリーズドライしたものなので、酸化問題がマイルドであれば美味しい。
様々なインスタントがある中で、今、一番のオススメはAGFの『ちょっと贅沢な珈琲店』ですかね。
このブラック、香りはともかく、良い感じにコーヒーとして再現されている。
ドリップするのが面倒な時は、こいつに牛乳多めに入れて飲んでます。

リラックスする時間を作るのに、眉間にシワを寄せて、肩に力を入れる必要はない。
気楽に淹れて楽しめば良い。




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