みずのさんのノオト:胃カメラ(経鼻)

ある時期、体調が芳しくないのでと、検査のために胃カメラを経験した。
口ではなく鼻からなので楽だと聞いていたが、思っていたほど楽でもなく、何だか、クタクタになった記憶がある。

しかし、毎年受診する人間ドックで、あんな低解像度の映像を得るのに、X線に被爆し、何だかお腹の調子もよく分からなくなるバリウムで数日もモヤモヤするのが嫌だったので、それならば直接見るべきだと、胃の検査をカメラに変えた。

結果を言えば、もう慣れた、だ。

慣れてしまえば、当初の想像レベルには及ばないが、かなり楽なのだ。
検査終了後、30分も経てば日常生活に戻れるので、やれ下剤だの、やれトイレに行けだの、考えなくても良い。
人間ドック終了後、何も心配せず飲食が出来るのだ。
加えて、まだ残っているんじゃないかと思われるようなバリウムの心配をする必要もない。
そもそもだ。
化学畑なので、硫酸バリウムの沈殿など、学生実験なんぞでも見てきたが、油断すると固まるようなシロモノなのだ。
手の及ばない腸内でどうなっているのか分かったもんじゃない。

バリウムと比べて楽だと思っている胃カメラ。
もちろん、コツがある。

まず、体の力を抜く。
これが出来そうで出来ない。
最初のカメラは、もう、力が入りすぎてガチガチだったから、痛いというか苦しいというか、何とも言えぬ状態で苦しんだわけだ。
何らかのハラスメント的な表現になるかも知れないが、女性の初めて、というのは、こんなものなのかも知れない、と鼻から胃にかけてカメラを突っ込まれながら思ったものだ。
しかし、体の力を抜けるようになった3回めくらいからは、受診しながら自身でモニターを眺められる余裕ができた。
最近、看護師さんに「目を開けていると楽ですよ」と言われた。
慣れても、カメラが入る瞬間などは、なんとなく目を閉じて構えていたが、なるほど、目を開けたら、思ったより力が入らない。

次は、垂れるものは垂らしておくことだ。
鼻から喉にかけて麻酔されるため、上手に唾液が飲み込めない。
呼吸困難になるんじゃないかと思うくらいに自由が効かないので、一瞬、パニックになるが、落ち着けば鼻からも口からも普通に呼吸が出来るので、落ち着くことは大切だ。しかし、唾液など、ヘタに飲み込もうとすると、むせたりすることもある。
慣れるとある程度は飲み込めるようになるが、こういうことを見据えて大量にティッシュペーパーが渡されたりするので、そのまま口から垂らす、が正解だ。
ましてや、カメラが体内に入っている間、たいてい、横向きに寝ているが、唾液かヨダレか分からぬものは、そのまま垂らす。
普段、そういうことをしないので、自然と行うのが難しいのは、体の力を抜くのと同じだろう。

イメージとしては、串が刺された焼き魚だ。
鼻から胃まで、一直線を保った状態をイメージしつつ、脱力して無心になる。
これ以上でも以下でもない。
まぁ、涙目になったりもするが、それも、垂れ流しの対象だ。
とりあえず、毎年1回、自分の体の中を覗くようにしている。
もう、バリウムには戻れない。


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