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『ワッチャプリマジ!』本気になれない弥生ひなと、本気にさせる応援

『ワッチャプリマジ!』11話は、まるで序盤戦のクライマックスのような展開でしたね。
グランドフェスに向けての最初の大会を描いたエピソードだったのですが、ジェニファーのグランドフェス出場辞退から始まって、今まで「頼れる先輩」という立ち位置だった弥生ひなが大きく掘り下げられ、キャラクターの魅力がガツンと上がるような素晴らしい一話だったと思います。
弥生ひなとチムムの絆も取り上げられた他、見どころの多い一話だったのでちょっとメモとして起こしておきます。

目標の喪失

まず考えたいのは、弥生ひなにとって『ジェニファー』とはなんだったのでしょうか。トッププリマジスタではないにしても、弥生ひなは最上位に君臨するプリマジスタです。
その熱く真っ直ぐな性格から多くの人達に好かれていますし、間違った事をしたらそれを優しく諭す器量もある。自分のことを慕う陽比野まつりの想いを真正面から受け止めて、「弟子」ではなく「後輩」「新人」として扱い、彼女達を導いていく弥生ひなは、ジェニファーに勝たずとも既にプリマジスタとしては成功者でしょう。
ましてや今年は「ジェニファーがグランドフェスに出場しない」と公表しているわけですから、「トッププリマジスタになる」ということが目標なのであれば、弥生ひなにとってはラッキーとしか言えない状況。
そんな状況にも関わらず、弥生ひなが大きく動揺したのは「ジェニファーと真剣勝負をして勝つ」ということが大事だったからでしょう。『プリマジ』らしく言うのであれば、「ジェニファーがいたから弥生ひなは本気でプリマジに打ち込むことが出来た」のです。
だから「ジェニファーはグランドフェスに出ない」は、弥生ひなにとって「本気になれる大きな理由が一つ失われた」なんですよね。
「皆が期待する『弥生ひな』であり続けたい」という理由があるので、ジェニファーがいなくなったぐらいですぐに崩れるほどではない。でも「高く飛ぶ理由」が失われてしまった。
また「ジェニファーが自分を軽んじているのではないか?」とも思ったのかも知れません。ジェニファー自身は「もっと後に、もっと違う場所で言うはずだった」とも言っていますが、それは弥生ひなには見えてませんから。
ともあれ、「ジェニファーに挑む機会すらなくなってしまった」という事実は弥生ひなからプリマジへの本気を削ぎ落とし、熱を奪い去り、彼女に「不注意からの怪我」という非常に重い罰を与えていきました。

立ち直れたのは

怪我をしてでもステージに立つ。
そう決めたのは弥生ひなの意地でしょう。ファンの期待する『弥生ひな』であり続けると心に決めた彼女に最後に残された「心の支柱」。この支柱がなければ弥生ひなはステージに立つ事も諦めていたことでしょう。
しかし動揺を押し殺し、怪我の痛みを周囲の期待で誤魔化しているような人間に出来るほど『弥生ひな』のパフォーマンスは甘くありません。弥生ひなは本気でプリマジをしている。本気で居続けることが出来ない今の弥生ひなに、『弥生ひな』の本気のパフォーマンスが出来るわけがない。
ジャンプの高さが足りず、地面に叩きつけられそうになる弥生ひな。
薄々感づいていた「本気になれていない」ということを思い知らされるかのような失敗に彼女の心は折れ、重力に任せてステージに叩きつけられる事を選択してしまうのですが、彼女がもう一度本気になれたのはチムムの応援があったからでした。
弥生ひなの事を誰よりも信じ、誰よりも本気で応援してくれるチムム。
そんなチムムの応援によりジャンプの失敗を上手にブレイクダンスへと繋げてリカバー。無事にステージを終えることに成功します。
「何事もなく終わってくれ」と祈ってしまうような導入からの弥生ひなの失墜。そしてチムムの応援によって復活する弥生ひな……と1クール目の終盤戦に相応しい展開なのですが、この展開が熱いのは「マナマナマジパチュッピ(=人間と魔法使いが手を取り合う事で魔法のような奇跡を起こせる)」をまつり&みゃむとは別の方向性から描いていることですね。

まつりとみゃむは、「魔法を暴走させてしまったみゃむをまつりが受け止めることで、どうにかピンチを脱する(それにより二人の絆が深まる)」というチュッピ(=人間)がマナマナ(=魔法使い)を救う展開だったんですが、ひなとチムムはその逆。「マナマナがチュッピを救う」という展開なんです。
なぜ「逆の構図を描いたのか」と言うと「マナマナとチュッピは対等な立場であること」を描くためでしょう。「マナマナマジパチュッピ」という言葉を考えると、「この方向からでも奇跡は起こせるんですよ」という実例を出しておくのは大事なことだと思うんですよね。
実際弥生ひなはチムムの応援のおかげで「皆の期待を裏切る」ということを回避出来、今の自分に出来る最高の「本気」を出せた。
その本気は弥生ひなにチムムがいたから出来たことになっているので、マナマナマジパチュッピの可能性を感じずにはいられませんね。

それを取り巻く人々

また弥生ひなを取り巻く人達も今回の注目したいことの一つでしょう。
大会に出ずに地道な活動でグランドフェス出場を狙う甘瓜みるきは、失敗してもリカバーして大きな盛り上がりを作ってしまう弥生ひなを「化け物」と呼び、真正面から戦わずに逃げる事にした自分の戦略の正しさを再認識しました。
短い時間だけど弥生ひなの背中を見ていた陽比野まつりは弥生ひなの本気を見て、圧倒されながらもみゃむと二人でステージへと挑む事を決めました。
それに対して友人として心配しているのが皇あまねで、彼女は「周囲の期待に応えること」を大事にする弥生ひなの危うさについて触れた上で心配しており、二人の過ごしてきた時間の長さを感じさせてくれますね。

加えて言うなら、弥生ひなもまつりの本気に対し、「精一杯やるからこそ負けたら悔しい」と語っている点も大事なところでしょうか。
地味な点ですが、作品の方向性が見えるものなので今後どうなるのか楽しみです。

結びに

今回はちょっとプリティーリズムっぽさがある回だったと思うのですが、プリティーリズムの場合「最後の椅子に座れるのは結局一人なんだよ」という部分が強く出ている作品なので、失敗しても誰も助けてくれないんですが、『ワッチャプリマジ!』はマナマナとチュッピの二人で立つものなので、失敗は一人で抱える必要がないんですよね。
「プリティーリズムではそうだったけど、プリマジではそうはならない」というのは本当に大事なことで、『ワッチャプリマジ!』という作品の方向性がしっかりしていないと見れないもの。
それが1クール目でもう見ることが出来たのは凄く嬉しいことで、これが深化していくのか展開していくのか気になるところです。

プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。