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『アイカツプラネット!』実写とアニメを橋渡しする「アイカツ!」らしさ

『アイカツプラネット!』の放送が開始されました。
既に稼働開始しているゲームの出来がとても良かっただけに、「この作品でどういう物語を提示してくるか」がとても気になる年末年始を過ごしてきたわけですが、ようやく確認できた第一話は良い意味で「アイカツ!らしさ」を感じさせる作品になっていて、とても面白かったです。
「『実写とアニメを行き来する』というのはこういうこと」がしっかりと提示されたという意味でも素晴らしく、そして期待の高まる一話でした。

実写とアニメの使い分け

『アイカツプラネット!』は実写ドラマとアニメを組み合わせた作品です。
アニメは「アイカツプラネット」という仮想現実空間での活躍を、実写ドラマはアイカツプラネット外での活躍を双方を行き来しながら描いていくわけですが、全体的な作りとしてはアニメに寄せた作品になっていた点は面白かったですね。
アイカツ!の歴代主人公が行ってきた微笑むタイトルもそのまま継続されていますし、音楽の使い方もレイアウトもどこかアニメチックになっている。アイカツ!シリーズのファンであればあるほど「あっ、これはアイカツ!だ!」と思える演出になっており、「どうなるのかなぁ」という不安を「アイカツ!」という力で見事に吹き飛ばしてくれました。びっくりするぐらい「いつものアイカツ!」で、「アイカツ!シリーズにとって挑戦作」という本作の立ち位置がより鮮明になった気もします。
個人的に面白かったのは、アニメと実写ドラマで発声方法を変えている点でしょうか。
『アイカツプラネット!』では現実でもアイカツプラネットでも同じ役者が声を担当しているのですが、アイカツプラネットの中だと発生方法や抑揚の付け方が「同じ人間の出すアニメ的な声の出し方」になっている。逆に現実世界部分では普通にドラマの声の出し方になっているんですが、これによって「同一人物がアニメと実写を行き来する」という作品構造が「役者本人への興味」に繋がりやすくて、面白い効果が出ているなと思います。
そっち方向への広がりも込みにした企画だと思うので、このやり方が成功してると面白いな!と思いますね。

ドレシアの相性によるキャラ演出

ここからはちょっと内容の話になるのですが。
『アイカツプラネット!』のライブはアイドル達がドレシアの力を借りて戦うバトルステージとなっており、ハナ(舞桜)は実力では完全にキューピッドに負けているにも関わらず「ドレシアバトルで勝利した」の一点突破でキューピットに勝利します。
これは作中でも言及されているように、ハナ(舞桜)の選んだドレシアがキューピットの選んだドレシアに対して有利相性だったからですが、この「ドレシアの属性によって有利/不利が発生する」という相性設定によって、少なくとも三つの点が上手く演出されていたことが面白く感じました。

まず一つ目は「キューピットは実力ではなくドレシアの相性によって敗北した」ということです。
キューピットは「先代のハナに肉薄するほどの実力を持つトップアイドルの一人である」と作中で語られていますが、そんな実力のあるアイドルが「『ダンス経験がある』『先代ハナと重なる部分がある』という特徴があるものの、アイドルとしては今回が初ステージ」という舞桜に負けるのはおかしいですよね。
そこを「実力では完全に勝ってるけど、ドレシアの相性が悪すぎて負けた」にすると「ドレシアの選択さえ間違えなければ完全に勝ってた」になるわけです。

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キューピットのトップアイドルとしての格を下げないように、敗北理由に「相性」という理屈をつけているのは美しいところですが、しかし「ここぞという時にドレシアの選択を間違えるようなアイドルがトップ?」という別の疑問が湧き出てきます。
それに対する解答が、二つ目の面白かった点である「キューピットは先代ハナが使うだろうドレシアに対して有利になるドレシアを選んでいた」という設定です。
同じ「ハナ」というアバターを使っていても中身は違う人間ですから、ドレシアの選択も異なって当然です。結果として「キューピットは先代ハナに対して有利になるようにドレシアを選出していたため、ハナ(舞桜)が選んだドレシアには不利に働いてしまった」になったのですが、ただ「先代ハナのドレシア選出に有利になる選出をしていた」ということは、逆に言えば「キューピットは本気でハナに勝ちに来ていた」ということでしょう。
この相性があるからこそ「本気で勝つために相手に対して有利なドレシアを選ぶ」という行動を取ったキューピットに「勝ちたい」という意思と、トップアイドルの貫禄が感じられて良かったですね。

また「いつもとは違うドレシアの選出をしている」ということから「ハナに対して違和感を抱く」という描写が入っているのも凄く良かったですね。
「いつものハナならこのドレシアを選ぶはず。だから私はこのドレシアでいく!」という読みが出来るのは、先代ハナのことを研究しているからこそ。
その研究結果とは違うドレシアを選出してきたハナに違和感を抱くのは当然のことかと思います。
この「ハナへの違和感」も、ドレシアに相性の設定があるからこそ出来るもので、今後への広がりを感じさせる良い演出に使われていたと感じました。

実写だからこその説得力

秋元才加の使い方も面白いところの一つでした。
今作では、舞桜とアイドルを引き合わせ、マネージャーとしてそのサポートを行っていく「綿貫いずみ」というキャラクターを演じているのですが、キャラクターである綿貫いずみがアイドルについて語る時に「元AKB48の秋元才加」がオーバーラップしてくる。
元トップアイドルを演じた人間の語る「アイドルは良い」「見ている人に勇気を与える」という言葉は、キャラクターの言葉として台本に書かれた台詞であったとしても重いし、説得力がある。
特に今回は実写ですから「秋元才加本人の身体から発せられる言葉」として捉えると、その重さとかアイドルの素晴らしさは更に増していたんじゃないかと思います。

キャスティングを見た時から「そういう部分も狙ったキャスティングにしているんじゃないかなぁ」とは思っていたのですが、想定以上に秋元才加の属性が生かされていて、これからどのように生かされていくのか楽しみですね。

最後に

「実写とアニメを組み合わせる」というアプローチを行う事で、「今までにない新たなアイカツ!」を生み出そうとしている『アイカツプラネット!』ですが、一話を見ている限りでは「実写の面白さ」「アニメの面白さ」が両方しっかりとあった上で「アイカツ!らしさ」がその双方を上手く橋渡しするような作品になっているかなと思います。
いきなり「トップアイドルの代役」という重大な仕事を任されることになった舞桜も、思い切りが良く、前向きにアイカツ!をしていきそうなキャラクターで「アイカツ!の主人公らしさ」が感じられました。

実写部分についてはもうすでにクランクアップしているとのことなのですが、今のシリーズがどこまで描かれるのか楽しみですね。

プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。