「本気」を「最高」にする一年の魔法ーー『ワッチャプリマジ!』完結によせて

10月9日に『ワッチャプリマジ!』が完結しました。
タカラトミーアーツが展開する「プリティーシリーズ」の10周年記念作品として昨年10月から放送されていた本作ですが、「一年間で完結する物語」として素晴らしいものを見せてくれたと思います。
チュッピ(人間)とマナマナ(魔法使い)。
異なる世界に暮らす二つの種族が互いに手を取り、最高のエンターテイメント「プリマジ」を作り出す。
そんなプリマジに魅せられた少女と、大魔法使いを夢見る魔法使いが出会った事から始まった物語は、一年後に「二人で最高のプリマジスタになる」という結末を迎えました。
『ワッチャプリマジ!』を見ることを優先してこの一年間を過ごしてきた人間としてはこの結末は納得できる結末でしたし、「色々あったけど、一年間見てきてよかったなぁ」と心の底から思ったのですが、何が良かったのかというとやっぱり「本気で生きる」という事を正面から描いてたことにあります。

本気で生きてる奴はカッコいい

『ワッチャプリマジ!』のメインテーマは、「本気で生きてる奴はカッコいい」でよかったのかなと思います。
一話で述べられていた事ですが、本作には様々な形で「本気の生き方」をしているキャラクター達が登場していました。
陽比野まつり達プリマジスタもそうですし、彼女達を支える家族や友達、プリマジの裏方を支える人達も「自分達の本気」で生きていて、本気を貫くために努力を重ねていました。
そして一人一人が本気で生きているからこそ人と人は交わることでの喜びが生まれ、そして自分の本気を貫こうとするからこそ時として人は衝突する。
まつりとみゃむが出会ったことから始まった一年は、そんな喜びと交わりと衝突に満ちた物語でした。
ジェニファーに憧れ、みゃむに導かれ、プリマジを始めた。
プリマジスタ達と出会い、時に戦い、共に歌い、本気でぶつかってきた。
そうした本気でぶつかってきた日々があったからこそ、この物語の最後は「私、最高のプリマジスタになったよ!」だったと思うのです。
本気で「my best」を追い求めていたからこそ、本気でジェニファーのように皆の愛に応えられる存在になろうと思っていたからこその結末が、「全プリマジスタ達のトップ」ではなく「私にとっての最高のプリマジスタ」というのは着地点として良かったんじゃないでしょうか

本気で生きてるから辛い

また『ワッチャプリマジ!』は「本気だからこそ辛く、悲しい」という事にも触れていた点が良かったと思います。
一生懸命頑張っても弥生ひなには届かなくて「プリマジをやること」そのものを諦めそうになるエピソードだったり、本気で一緒にいたいと思っていたのに大人の事情で引き裂かれたエピソードだったりはそうした「本気だからこそ悲しくて、そして辛い」という「本気の負の側面」を描いたエピソードで、『ワッチャプリマジ!』と言う作品を引き締めていたように思いますね。
あまね様の「皆は本気で頑張っているのに、自分の本気はまだ定まらない」という焦燥感なんかは見応えがあったんですが、個人的に印象に強く残っているのは「自分は本気で話しているから、相手にも本気で返してきてほしいのに、嘘で塗り固められた綺麗事で返してきた」というジェニファーと御芽河阿智彦のエピソードが一番ですね。あまりにも理詰めな展開でシビレました。

あのエピソードでのジェニファーは御芽河阿智彦に本気で話してほしかった。
「自分はこういう理由で貴方に協力している。だから貴方もなぜこの計画を推し進めているのか本気で話してほしい」と言っているのに、御芽河阿智彦は綺麗事だけしか言わずにジェニファーの本気に向き合おうともしなかった。
この時点での阿智彦は他人の本気に全くと言って目を向けず、自分の本気以外はすべて有象無象の出来事に過ぎない!という暴君で、長男である祈瑠が良い事をしても全く褒めることをしない男だったんですが、そうした「他人の本気に向き合おうともしない態度」が、祈瑠の暴走とジェニファーと太陽のエレメンツの融合、そしてプリマジ全体の崩壊を招く展開に繋がっている。
「本気で生きているからこそ深く傷つく」「本気だから辛い」を描いた悲しいエピソードではあるんですが、半年以上積み重ねてきたキャラクターの描写が全て結実し、最悪の方向に発展してしまうあの展開は凄かったと思います。
そして、こういう描写があるからこそ、ジェニファーを再び人間に戻したまつりが生きてくると思うんですよね。
本気でやってる。だからその結果が報われなかったら悲しい。辛い。苦しい。
それでも私はプリマジが好き。プリマジが自分を選ばなくても、認めてくれなくても、私はそれでもプリマジが好き。
これはもう愛なんですよ。見返りを求めない無償の愛。
そういう愛が「プリマジなんて無くなってしまえ」と自暴自棄になっていたジェニファーを救っていくのは素晴らしかったですね。
リューメと出会わせてくれたプリマジをジェニファーが嫌いなはずないんだから。

こういう愛の話を最後に持ってきたのは凄いと思います。
そして一年間かけて「プリマジを愛する人間」を育ててきたのが『ワッチャプリマジ!』なんですよね。

貴方が本気でかけた魔法

またエピローグとして挿入された「みゃむとの別れ」は『ワッチャプリマジ!』の最後を締めくくるに相応しい一話だったかなと思います。
みゃむって最初は自分のことしか考えてなかったんですよね。
まつりをプリマジに誘ったのも自分の実力を見せつけるためだし、「なぜ自分の実力を認めさせたいのか」というと周囲が自分を認めてくれないから。
「夢がない」というまつりをバカにしてましたけど、みゃむの「大魔法使いになる」という夢も「周囲に自分の存在を認めさせる」というのが本当の夢で、出会った頃のみゃむは自分勝手で他人を気を遣う事はおろか、自分の心の中に他人がいることも許せないようなキャラクターでした。
でも一年間、まつりと一緒にプリマジをしてきた日々がみゃむを変えていった。
「まつりと一緒にプリマジがしたい」と思い、誰かのために自分の事を顧みずに魔法を使えるようになった。
一年前にはあり得なかったこと。自分では想像すらしていなかったこと。
それを出来るようにしてくれたのが「みゃむにまつりがかけてくれた魔法」とした海岸での別れのライブは涙なしには語れないエピソードでしょう。
また「別れ」を否応なく感じさせる描写の数々を「再会のための準備」としていくのも良かったですね。
みゃむの「大魔法使いになる!」と言う夢を「またまつりとプリマジするために大魔法使いを目指すぞ!」にしていった点も、一話に込めた要素を上手く昇華していた点も素晴らしかったと思います。

また会える日を

「本気でやる」って大変なことだと思うんですよ。
気力も体力も使うし、どれだけ頑張っても結果が答えてくれるとは限らない。失敗したら苦しくて辛いし、上手く行ったとしても誰かが賞賛してくれるわけでもない。
それを分かっていても「本気になる」のは「好きだから」。
自分の気持ちを理性で押さえられないから「本気になる」。
『ワッチャプリマジ!』はそういうことを描いた作品でした。
そしてそういう作品だったからこそ、私も本気で好きになっていい作品なんだ!と本気で応援させていただきました。
今の気持ちは素直に表すのなら「ありがとう。本気にさせてくれて」。
一年間、ありがとうございました。楽しかったです。

ところで最終話残り2分ぐらいで登場したチムム、きゃろん、ぱたの、はにたんの人間体は一体何なんですか。最終話でいきなりあんなものをぶち込んで来たらこっちも期待するんですよ!
本気で応援したいので二期でも何でもいいので続き、よろしくお願いします!私、本気のマジだから。



プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。