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『トロピカル~ジュ!プリキュア』は、今だからこその想いにあふれていた

1月30日。『トロピカル~ジュ!プリキュア』が終わった。
「トロピカってる」が口癖の天真爛漫な人間の少女・夏海まなつと、人魚の国グランオーシャンの女王を目指す人魚の少女・ローラ、そしてトロピカる部の一年間の物語は、ここに幕を下ろしたのだ。
初めて本作を見た時の印象はとにかく「今やりたいことを思いっきりやろう!を思いっきりやってる」に尽きる。本作風に言うのなら、一話から「トロピカってる」のだ。
未来がどうなるか。過去がどうであったか。他人の意見がどうとか、自分の立場はこうだとかそんなことは一切関係ない。
「今自分がやりたいことはなんだろう」「じゃあそれを思いっきりやろう!」とパワフルに突き進んでいくまなつ達の姿は見ていて楽しくなれたし、「やりたくないけど、仕事だからやらなきゃいけない」としぶしぶ怪物を生み出して人々からやる気を奪っていく後回しの魔女陣営には妙に親近感を覚えた。
一年を通して遊び心もたっぷり詰め込まれていた点も忘れてはいけない。
皆でまなつの故郷に行く話もあれば、仕事から逃げ出した後回しの魔女陣営のエルダとひょんなことから心を通わせる話もある。
特に33話の「Viva!10本立てDEトロピカれ!」はそんな遊び心がギュッと詰め込まれた回で、「ショートアニメを11本放送する」というおそらく本作ぐらいしか出来ないだろう。
本作に携わった人間が「今やりたいことを思いっきりやる」をしっかりと実践してみせたその姿勢に畏敬の念を抱かざるを得ないのだが、こうした「今やりたいことを思いっきりやろう!」が輝いて見えたのは視聴者は「今やりたいことを思いっきりやることが叶わない」からだろう。
前作『ヒーリングっど♥プリキュア』放送期間中に始まった新型感染症の流行、緊急事態宣言の発令、それに伴う制作中断/放送休止は「プリキュアすらも我慢しなければならない状態なのか」という印象を強く残した。
『トロピカル~ジュ!プリキュア』の放送期間中もそうした「我慢の日々」は引き続き継続されており、放送休止こそなかったものの「いつ前年の出来事が起きてもおかしくはない」状態であった。
そんな視聴者にとって我慢の日々だったからこそ、『トロピカル~ジュ!プリキュア』が一年を通して叫び続けた「今やりたいことを思いっきりやろう!」は、雲の切れ間に見えた青空のように美しく、そして力強いものだった。
今はやりたいことが出来ない。でもこの日々がいつか終わった時、その時こそまなつ達のように「今やりたいことを思いっきりやろう」。
彼女達の太陽のように明るく眩しい一年間は、そんなささやかな夢と力強い希望を心に芽生えさせてくれたと思うのだ。

我々は今「やりたいこと」を後回しにさせられている。
こればっかりは仕方ないことであるが、後回しの魔女が遥か昔にやりたかったことを今やってみたことで心が救われたように、我々が今「やりたい」と思いつつも後回しにさせられた出来事は、我慢の日々が過ぎ去った後できっと救いをもたらしてくれることだろう。
『トロピカル~ジュ!プリキュア』はまさしく「今を生きる作品」だったのだ。

余談だが。
『トロピカル~ジュ!プリキュア』の放送期間中は『キラッとプリ☆チャン』と『ミュークルドリーミー』があったので、ファイルーズあいがレギュラーで出ている作品だけで3本ある時期があったのだ。
「こんなことある!?一年物のアニメを同期で三本取ってるとか凄すぎない?」と思いながら見ていた。最高だったね。


プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。