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『ミュークルドリーミー』のバレンタイン回が凄すぎた

『ミュークルドリーミー』41話「バレンタイン和菓子配っちゃお!」が配信開始されました。

『ミュークルドリーミー』とは、ミラクルドリーミー王国で作られたネコのぬいぐるみ「みゅー」とそのパートナー「日向ゆめ」を主役にしたサンリオ発のファンタジー作品。
桜井弘明監督らしい独特の空気感と魅力的なキャラクター、物語の主要なテーマの一つに「恋愛」を取り上げていることなどから一部の界隈で熱い支持を集めているのですが、2月で恋愛といえばやっぱりバレンタインデー!ということで「『ミュークルドリーミー』のバレンタインはどうなるのか」というのは注目を集めていました。
この41話はそんな視聴者大注目のバレンタインを描いた回だったのですが、一筋縄ではいかない『ミュークルドリーミー』らしく、予想の斜め上をいく回でした。
みゅーやゆめ達と敵対しているぬいぐるみ「ゆに」によって誕生したある怪人により、今までのどの回よりも絶体絶命な状況が誕生してしまったのです……。

モテない男達から生まれたバレンタインを消す怪人

今回登場した怪人を一言で表現すると「モテない男達の怨念から誕生したバレンタインを消し去る怪人」でした。
バレンタインといえば「女の子が好きな男の子にチョコをプレゼントするイベント」ですから、バレンタインにチョコをもらえない事がほぼほぼ決まっている男達がネガティブな感情(本作では「ブラックスキーマ」と表現される)を溜め込んでいてもおかしくはありません。
そんな「バレンタインへのネガティブ感情」から生じた怪人が今回は暴れ回ったわけですが、この怪人が暴れた結果「バレンタインチョコ」そのものを消滅させていくのみならず「バレンタイン文化そのものの消失」というとんでもない事態を招いてしまうのです。

もちろん主人公である日向ゆめ達も見ていないわけではなく、怪人が暴れまわっている時点で騒動を納めるために、怪人を生み出した元凶ーー今回で言えば「モテない男達のネガティブな感情そのもの」に飛び込んで事態を収束しようとするのですが、怪人の罠に嵌って閉じ込められてしまうのです。
日向ゆめ以外に「騒動を引き起こしている存在を直接叩き、これを浄化する」ということは出来ませんから、この状態は実質的に「詰み」と言っていい。
おまけに怪人が暴れれば暴れるほど、「バレンタイン」に対する記憶が消滅していきますし、過去の記録も改ざんされていきますから「何が問題だったか」すら分からなくなっていく。
かくして『ミュークルドリーミー』はバレンタインというイベントのその日に、作品始まって以来最大の危機が訪れることになったのでした。

あさひ君の奮闘

そんな『ミュークルドリーミー』開始以来の絶体絶命の危機に立ち上がったのが南川朝陽でした。
日向ゆめの幼馴染で彼女に密かに想いを寄せている南川朝陽でしたが、この日の朝陽はゆめの事が心配なあまり、ある一言を言ってしまってささやかなすれ違いをもたらしていました。
視聴者視点で見れば朝陽の心配は無理からぬことなので、思わず言ってしまったのは仕方がない事だと思いますが、事情を知らないゆめからすれば傷つく一言であることは間違いありません。
結果、朝陽は「自分の想い人を傷つけた」という自己嫌悪に陥ってしまうのですが、そんな自己嫌悪の中、朝陽は「街で暴れまわる怪人は『バレンタインを消し去りたいと願うモテない男達の怨念から生まれた存在』である」という事実を知るのです。
「自分がもしかしたら怪人誕生の一端を担っていたのかもしれない」。
そう考えた朝陽は怪人を止めるべく、バレンタインの記憶が薄れゆく中で行動を開始します。
「日向ゆめと、『日向ゆめのバレンタイン』を守りたい」という想い一つで走り出す朝陽君はとても格好いいわけですが、しかし「怪人を直接叩く」ということは日向ゆめ以外に出来ず、かといって今回の怪人は「モテない男達の女の子からチョコがもらえないことに対する怨念」から生じたものですから男の子である朝陽では効果はありません。
日向ゆめを救いたい。でも対抗する手段は男の子である自分には無理。
そんな朝陽が取った行動とは、視聴者である我々の予想を遥かに超えるものでした。

あさひ君、女装する

「モテない男子はマドモアゼルからのチョコがほしいんであって、男子からチョコを貰っても嬉しくないんじゃないか?」

そうパートナーのれい君から言われた朝陽が取った行動は「女装してバレンタイン和菓子を配る」でした。
本来なら「バレンタインチョコを配る」が正解だと思いますが、バレンタイン文化が消滅しかかっている現状では「バレンタインチョコ」は叶いません。
そこで和菓子なのは「バレンタインチョコ」という文化そのものが消滅しかかっている現状ならではの解決方法なわけですが、まさか想い人とバレンタインを守るために朝陽がそこまでするとは思ってませんでしたから驚かされましたね。
朝陽本人も赤面していることから「恥ずかしい」と思っていることは間違いないかと思うのですが、「それでも日向ゆめを救うためなら恥ずかしいと思っていることすらもやってやる!」というのは並大抵の覚悟ではありません。
むしろそこまでやるぐらいには今回の事件に対して責任を感じているし、「日向ゆめを助けたい」という思いは純粋なのだろうと思います。
そんな強い思いを見せた朝陽の奮闘により今回の怪人は消滅。すれ違っていた日向ゆめと南川朝陽は元の関係性へと戻り、朝陽のブラックスキーマも浄化されたのでした。

なお「声で男だとバレるのでは?」という問題ですが、れい君が解決してくれました。

最後に

『ミュークルドリーミー』のバレンタイン回は「チョコをあげる側」ではなく「チョコをもらう側」に物語を置いた物語となっており、この作品らしいとはいえ少し変わった方向性だったかなと思います。
しかし「貰う側」に物語を置いたからこそ、「好きな人のバレンタインを守りたい」と頑張る朝陽を格好良く感じ、その奮闘もあって「好きな人からチョコを貰う」が出来た朝陽に「おめでとう」と祝福の声をかけたくなるような一話になったことは間違いないでしょう。朝陽、お前がナンバーワンだ……。

二期でもキャラクターも全員続投することが発表されていますが、一年後のバレンタインはどんな二人がいるのでしょうか。
一年目の終わりが見えている今だからこそ、一年先が今よりも少し進んでいる事を楽しみに待ちたいと思います。

プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。