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『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』を生きて見届けることが出来て良かった。

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が配信開始された。
この間まで映画館で上映されていたのであまりにも早すぎる気がしないでもないが、「ソフト化されるまで見れない」よりは「配信環境でいつでも見れる」になる方が再確認しやすいし、何よりまだ見てない人に勧めやすいのでありがたい。まだ見てない人は早く見ろ。
『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』は、本当に今年の映画豊作っぷりを予兆していたかのような作品だと思っているが、発表された直後は不安だった。何をやるのか分からなかったからだ。
「正当な続編である」と分かってからも不安だったし、公開初日の朝に至っては「やっとデスティニープランを否定したその先が見れるのか。怖ぇな」という気持ちしかなかった。
『SEED DESTINY』にて、ギルバート・デュランダルが提唱した「遺伝子を解析して判明した適性に応じた職務を各人が全うすれば不満が生まれず、争いにも発展しない」とするデスティニープランを、キラ・ヤマト達は否定した。争いを終わらせるために提唱されたデスティニープランに「間違っている」としたのだ。
しかし『SEED DESTINY』において、「その先」が描かれることはなかった。デスティニープランとは異なる『争いを終わらせる方法』の具体的な構想はもちろん、『希望』といえるような概念を示すこともなかった。
キラと『SEED DESTINY』の主人公でもあるシン・アスカが「共に争いをなくすために戦い続けよう」と和解するぐらいで、デスティニープランを否定したのに、争いをなくすための方法やデスティニープランを否定できるほどの強い<何か>は『SEED DESTINY』の完結から『SEED FREEDOM』まで描かれてこなかったのだ。
だから『SEED FREEDOM』には期待していた。
「デスティニープランを否定できるほどの『何か』を持たなかったキラ達が、今度こそデスティニープランを否定できる『何か』を示してくれるのか!」と。
その点において『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』は素晴らしい作品だった。
デスティニープランを否定してギルバート・デュランダルの死を見届けた責任を取らされる事になったキラの苦労っぷりは、「自分はこう思うから貴方とデスティニープランを否定する」が出来なかったからこそのものだったし、ラクスにすら頼ろうとしない姿は痛々しさすらあった。
そうした「自分が!」と背負い込んで悲劇の英雄ぶろうとする姿をアスランに突っ込まれた際の「君達が弱いから自分がやるしかなかった」は傲慢だったし、何の具体案も思いもないまま否定したことの代償が詰まっているとさえ感じた。
でもキラ・ヤマトはそこから奮起し、「自分がデスティニープランを否定しなければいけない『何か』」をしっかりと見つけてくれた。
ギルバート・デュランダルやデスティニープランを否定してしまった事でかけられた呪いを、キラ・ヤマトは仲間達の力を頼りながらも自分の意志で解いてみせ、「少なくとも自分はこれを理由にデスティニープランを否定する」と言ってくれたのだ。
それは争いの火種がいくつも眠ったコズミック・イラに立ち向かうにはあまりにも弱い力なのかもしれないけれど、それすら持たなかったキラ・ヤマトがその「愛」の力で立ち向かうところまで描いてくれただけで『SEED FREEDOM』は素晴らしい作品と言わざるを得ない。
だってこの解答なら「この終わり方はちょっと……」と思っていた『SEED DESTINY』当時の自分にも自信を持って「大丈夫だよ」と言えるから。
ロマンチストにもほどが有るけどね。でもロマンチックだから「なんとかなるかもしれない」と希望の未来を信じられるんだと思う。

また前述したテーマを補強するように、様々な「愛」の形が本作の中で提示されていたのも重要だと思っている。
「キラとラクス」のように同じものを同じ場所から同じように見て進む愛もあれば、「アスランとカガリ」のようにどれだけ距離が離れていても信じることが出来る愛もある。「シンとルナマリア」のような互いに支え合える愛もあるし、「マリューとムウ」のような愛も、そして悲劇的ではあるが「オルフェへのイングリッドの愛」も忘れてはいけないところだろう。
その愛の力でデスティニープランに基づいた適性と能力を発揮するファウンデーションの計画を粉砕していく光景は痛快で、本作の娯楽作品的な面白さはその愛のロマンチックさと粉砕される悪役の悲鳴で出来ていると思う。

「待って良かった」と「生きて見られて良かった」。
その2つを心の底から思えた作品だったので、初回上映が終わった直後に泣いている声が上がっていたことも含め、「『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』には良い鑑賞体験と素晴らしい思い出をもらった」と思っている。
それだけにすぐに配信が来てくれたこと、そしてソフト化も発表された事が嬉しい。ありがとう福田己津央監督とバンダイナムコ。
とりあえず配信でも「見るとプラモを組みたくなるな……!」と思わされたのでプラモを組みます。30MSだけど……。

プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。