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『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』両親が名前に込めた意味を知って大きくなるミナトの六話

『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』第二章の最後を締めくくるのは「エーデルローズ生達のお母さん」とでも言うべき少年・鷹梁ミナトだ。
『KING OF PRISM by PrettyRhythm』の頃から「料理といえば!」で神浜コウジと並んで描かれてきたミナト。
「鷹梁ミナト 心は大っきな太平洋」と題を打たれた六話では、そんなミナトがプリズムスタァを目指すようになったきっかけと、彼の胸の中で渦を巻く周囲のエーデルローズ生達や自分が憧れた神浜コウジの背中に「全くと言っていいほど追いつけていない」という自分の才能の無さへの悩みが描かれたが、「名前に込められた願い」が一つのテーマになっている第二章の締めくくりとして申し分ない、とても美しい一話だった。

「ミナト」という名前に込められた願い

今回素晴らしかったのはミナトが自分の名前に込められた両親の願いを知り、その願いをそのままプリズムショーへと昇華したことだ。
ミナトは自分の名を「実家の港になること」という意味だと思っていた。父親は都市部に働きに出ているし、祖父は漁師であることから一年を通して殆ど家におらず、先祖代々続けてきた実家の民宿稼業は祖母と母親が中心。家庭環境を考えれば長男であるミナトが「自分が港として家族と実家を守っていく」という考え方に行き着くのも当然と言えよう。
「自分の名前は実家を継ぐものとしての名前」「ミナトとは実家のこと」と捉えていたミナトであったが、両親にその名前に込められた本当の意味――「皆を迎え入れ、そして送り出す、港のような人になってほしい」という願い――を知って彼は大きく成長する。

その名前に込められた真の意味を昇華したのがあのプリズムショーだ。
故郷の漁港をモチーフにしたステージで、優しい歌を誰かを包み込むような大らかさで歌い上げ、大きく跳ねるわけではないが大柄な体格を活かした振り付けに、誰かを導いてまた誰かを迎え入れる目印のような地上の星――灯台を活かした演出。そして誰かを自分の精一杯でもてなそうとする心意気が現れた二種類のプリズムジャンプ。

プリズムスタァ・鷹梁ミナトが目指す姿が見えた瞬間だった。
自己ベストを更新しているようなので、おそらくこれまでのミナトは「何を目指したいのか」が具体的に出ていなかったのだろう。過去の自分を乗り越えて、「プリズムスタァ」として確固たるものを手に入れ、大海原へと漕ぎ出す人々を暖かく見守る彼の姿は力強さを覚える。
優しく暖かく、そして力強い。そんなプリズムスタァ・鷹梁ミナトは、これからも多くの人をその輝きで迎え入れ、送り出してくれるスタァとして活躍してくれるはずだ。

「才能無き者」の物語

また鷹梁ミナトの物語はプリティーシリーズの伝統である「才能無き者」の物語でもある。
プリティーシリーズは「才能の有無」に自覚的だ。どのシリーズにも一人は「周囲と比べて才能がない」というキャラクターが存在し、努力だけでは覆しようがない絶対的な才能の壁に苦悩する姿が描かれてきた。
その方向を決定づけたのはシリーズ第一作となる『プリティーリズム・オーロラドリーム』の主人公の一人・天宮りずむだろう。
誰よりも強い目的と熱意を持っていて、「伝説のプリズムスタァ・神崎そなたの娘」という身の上でありながら、天宮りずむはどうしようもなく凡才だった。何せ昨日今日プリズムショーを知った素人同然の春音あいらにプリズムジャンプを飛ばれてしまい、圧倒的な才能の違いに衝撃を受けるシーンが有るぐらいである。天宮りずむは春音あいら、そしてもう一人の主人公である高峰みおんのそれと比べると遥かに見劣りする凡才であった。
そんな凡才である天宮りずむが、努力の果てにあいらやみおんと肩を並べるようになるまで成長する物語は『オーロラドリーム』の柱の一つで、そのドラマチックな物語と合わせて天宮りずむは今もなお多くのファンから愛されている。
『オーロラドリーム』の事実上の続編となる『ディアマイフューチャー』でその物語を担ったのはヘインだった。
韓国からやってきたヘインは「PURETTY」というプリズムスタァユニットのリーダーであったが、日本のプリズムスタァ達との交流の中で才能を開花させていくメンバー達と自分を比較して思い悩む物語が描かれた。ヘインが言った「努力だけは誰でも出来るんだよ」は今もなお私の胸に刺さり続けている。
『レインボーライブ』では「誰か一人」ということはなくほぼ全員が共有しているような形となった。
とりわけ強く印象に残っているのは「周囲がプリズムライブを飛べている中で自分一人だけ飛べるようにならず、親からの期待で潰されそうになっていた」という蓮城寺べるであるが、他のメインキャラクターも多かれ少なかれ同種の物語は抱えている。この点はシリーズの一つの集大成である『レインボーライブ』の魅力の一つだと言えよう。

後継作である『プリパラ』では主に南みれぃがその「才能無き者」の物語を担当していて、「自分が努力して手に入れたものを容易く成し遂げる北条そふぃに才能の違いを感じ取る」など色々と辛い物語を背負わされており、2nd seasonでは紫京院ひびきに打ちのめされてアイドル引退を決意するところにまで追い込まれる物語が展開されている。

シリーズ最新作である『キラッとプリ☆チャン』でも萌黄えもが赤城あんなに愕然とするなど同種の物語が描かれているなど、もはや才能無き者の物語は「シリーズの伝統」と化しているが、プリティーシリーズから生まれた『KING OF PRISM』でもその伝統が踏襲されている事にシリーズファンとしては「らしさ」を見出して面白さを覚えてしまう。

今回はあくまで心持ちの話で解決しているが、続編ではひっくり返しても良い話でもあるので早く続きを作って頂きたい。兄妹の『ひとつ屋根の下』めいた三角関係とか、ばらまくだけばらまくのは!
まあ菱田監督作品的には「いつものこと」ではあるのだが。『プリティーリズム・レインボーライブ』も復讐を誓う法月仁で終わってますからね。

最後に

四話から六話までは「名前に込められた願い」を巡る物語だった。
一男は「自分も飛んでみせる」という願いを込めて「カケル」を名乗り、高田馬場ジョージの名にはスタァの夢を詰め込まれていた。そして六話のミナトは両親の願いが込められていたわけだが、三人とも自分の名前とその願いに見合った人間へと成長を遂げて本当によかった。「第二章」として映画館で見てよかったとも思う。

なおTV版六話のEDだった「LEGEND OF WIND」は「BOY MEETS GIRL」の三年後をイメージした続編になっていると小室哲哉は語っている。ミナトと翼と潮の三角関係を先取りした形なのかはわからないが、わざわざこの曲にしたことにも意味があると信じたい。

さて七話からは第三章となるが、レオ回もゼウス回もアレク回も最高にいいのでテレビで見れるのが本当に楽しみだ。


プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。