『真・女神転生5』が「四年待った価値はあったのか?」と問いかけてくる

暇になったタイミングを見計らってプレイしていた『真・女神転生5』を先日クリアいたしました。
クリア時のプレイ時間は55時間。終盤は悪魔合体に時間を注いでいたので、それを抜きにすれば大体40時間ほどでクリアまで辿りつけるんじゃないかと思います。
開幕5分で崩壊する東京を始め『真・女神転生3』を彷彿とさせる要素の多い作品でしたが、あちらと比べると幾分か見劣りする出来で、正直物足りなかったです。
基本的な部分は面白くないわけではない。むしろ面白いだけに、メインストーリーの薄味さ加減とボリューム不足の面が目立ってしまっているように見受けられます。

味の薄いルート分岐

『真・女神転生5』は「唯一神が去った後の世界をどうするか」が主題になっているため、ルート分岐も「世界を維持する(=従来のロウに相当)」「改革する(=従来のカオスに相当)」「人の手に委ねる(=従来のニュートラルに該当する)」となっています。
これについては「今までの構図を一度壊した上で、新機軸を作り出せている」として、私も好意的に評価しているのですが、問題は「各ルートのスタンスを描けていない」という点です。それも「そのスタンスの良い面」すらも全くと言っていいほど描けていない。ルート分岐後もその辺りは掘り下げられないまま終わってしまうので、「はい、そうですか」以外の感想が出てこない。
「世界を維持する」はまだ描けている方なんですよ。
唯一神の意思に殉じ、現在ある世界を維持する。そのためなら堕天することすら厭わない。む
これまでのロウヒーロー(便宜上)の歩みや会話の端々から伺える家庭環境を追ってきても「そうなること」には納得できる。パートナーとも言えるアブディエルと対になる存在に上ってくる展開は良かったと思いますし、アブディエルの目覚めが今までにないぐらい禍々しくて最高だったと思います。
ただ「改革する」に関しては、本当に何も描かれていなかった。
カオスヒーロー(便宜上)がその決断に辿り着く理由も、その背景も全くと行っていいほど出てこない。
カオスヒーローのパートナーになるのがアレなので「多様な価値観の中で生きる」と言う決断には「まあ神話的にそうだよな」とは思うものの、「キャラクターの描写で説得力をもたせる」ということが全く出来ておらず、「パートナーを盲信しているだけ。言いなり」に見えてしまう。
「人の手に委ねる」もカオスヒーローと同様で、「八雲ショウヘイがなぜそういう結論に行き着いたのか」を見せてくれない。
彼のパートナーとなっているジョカが比較的語ってくれている分、マシではあるんですが、掘り下げて面白くなりそうな要素を仄めかすだけなので、結局何も分からない。
「各陣営にキャラクターを配置し、それぞれに主人公抜きで成立するような物語を設定する」と言うアプローチは間違ってないと思うんですが、「維持する」以外はまあ虚無でした。
その「維持する」も、分岐前でほぼほぼ物語として終わってるから本当に味がしない……。

探索は楽しいが……

『真・女神転生5』で良かった点の一つが「廃墟と化した東京を歩くことができる」でした。
原型を留めていないレベルで破壊された建物もあれば、非常階段を使って屋上まで登ることができるビルもある。
倒壊したビルを橋代わりに崖の向こう側に渡ったり、崩壊しても雑多な秋葉原の中で迷子になってしまったりと探索しているだけで楽しいですし、エストマ(敵とエンカウントしなくなる)を使えば自由に歩き回れるので廃墟が好きな人には割と良いゲームかなと思います。一つ一つのエリアは高速移動手段がある関係でそこまで広さを感じないんですが、「ミマン」と呼ばれる存在を探す遊びもありますし、宝箱もかなりの数が存在しているので広さより密度を取った方向性は「東京」という場所にあってるんじゃないでしょうか。
ただエリア数が少ない。とにかく少ない。
拠点やイベント専用のマップを抜くと、全部で6個ぐらいしかない。
うち二つはダンジョンなので、探索できる場所は4個。あまりにも少なすぎる。ミマン探しを始めたらフィールドの端から端まで動く事になりますけど、それにしてもエリアが増えているわけではないので水増しするためのやり方に近いかなーと感じましたね。
これでダンジョン探索が面白ければいいんですが、二つあるダンジョンの両方とも「どう通り抜けるのか」でしかなく、仕掛けらしい仕掛けもないので面白くないんですよね。
スキルの燃費が全体的に悪いので「『いかにして戦闘回数を減らして次のセーブポイントまで辿り着くか』に面白さを置いている」といえば、聞こえはいいんですけど、それはフィールド探索でも存在している面白さなので、ダンジョン内でもそこしか面白さがないのは厳しいなーと思いました。
ダンジョン内にはミマンすらいないので、それ以外のエリアより面白さが減ってますしね。ダンジョン制作にかかった労力をエリアの制作に回した方が良かったのでは……?

最強を作りやすい悪魔合体

今回満足できたのは悪魔合体でした。
プレイ時間の大半はこの悪魔合体で「自分の好きな悪魔で最適なものを作る」ということに費やしていたような気がします。それぐらい悪魔合体の満足度は高かったです。
「なぜそこまでやっていたのか」と言うと「理想のスキル構成」がやりやすかったからです。
「合体時にどのスキルを継承するか」が選択制になったのは以前からですが、悪魔のスキルや耐性を継承するアイテムが入手しやすくなった関係で「そのアイテムで一部スキルを上書きすることを前提に、悪魔合体の計画を組み立てる」が可能となり、そこを前提に悪魔合体を考えると滅茶苦茶面白いんですよ。不必要な初期スキルを写し身で上書きできるのは本当にありがたい。
また最上位スキルに「耐性を無視してダメージを与える」というスキルが増えたのも「自分の好きな悪魔を強くする」という点に大きかったかなと思います。
結局は弱点属性で殴った方が行動回数が増えるので楽になるゲームではあるんですが、「この悪魔を使いたい」と言う気持ちはやっぱりあるわけで。
そういう悪魔でも耐性無視スキルを継承したり、弱点を消したりすれば一線級の活躍ができるのでまあ楽しくないわけないんですよ。好きなものが弱いままより、工夫すれば強く運用できる方が絶対に楽しい。
終盤まではスキル枠が狭いので乗り換えていく方がいいと思いますが、終盤でちょっと時間を使ってお気に入りを作っておくと、二週目とかで楽になりますので、時間を割いてもいいんじゃないかなと思います。
なおこれは私のクレオパトラ。

このあとレベルを上げて、今95です。

結びに

クリアした直後の個人的な感想としては「まずまず」でした。
ストーリー面の貧弱さはどうしようもないんですが、戦闘は面白かったし、悪魔合体も楽しかったので総合的に見れば「勧めるほどではないけど、好きなら買ってもいいのでは」ぐらいの作品ではないかと。
そう思っていたのですが、冷静になって考えてみると今作って発表から発売まで現実の時間で四年かかってるんですよね。
「発表から発売まで、四年待っただけの価値はあったのか?」という観点から考えてみると、残念ながら「少なくとも私にとってはその価値はなかった」と言わざるを得ません。
『真・女神転生3』における『マニアクス』、『真・女神転生4』における『真・女神転生4FINAL』が発売されれば買うと思いますが、五年ぶりの新作をこの出来で通してしまっている事を考えると、あんまり期待できないかなぁというのが正直なところです。

とりあえず納得できるジョカを作ったら終わりにして、年度末までの大作ラッシュに備えます。




プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。