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「『Fate/Requiem』盤上遊戯黙示録」に花束を

現在『Fate/Grand Order』にて『Fate/Requiem』コラボイベント『Fate/Requiem』盤上遊戯黙示録が開催されています。
COVID-19の感染拡大防止対策の影響で延期となり、紆余曲折を経てどうにか開催されることとなった(そして売りにしている部分で大きなやらかしが発生した)今回のイベントですが、色々と考えさせられるものが多かったので、思考整理も兼ねて今回のイベントについて簡単にまとめておきます。

コラボだからこそ出来る終着点を描いたシナリオ

今回のシナリオについては「原作がまだ完結していない(=エリセの設定された物語は半ばである)」「別作品の世界を舞台にする(=コラボである)」という点を考慮すると「基本骨子はよく出来ている」と思います。
『Fate/Requiem』では出来ない「エリセがカルデア(=別世界)にやってくる」という方法を解決とした点において「コラボイベントであることの意味」というのは十分ありましたし、この解決を見たからこそ「では原作である『Fate/Requiem』ではどういう決着の付け方をするのだろう」と興味が湧いてくる。
そういう意味ではコラボ前に現在発売されている一巻を無料配信したのは正解でしたね。一巻の内容を頭に入れた状態だからこそ面白い部分はあったかなと思います。
また終盤を見ていると『Fate/hollow ataraxia』のオマージュも含まれていたように思いますね。
終盤のサーヴァント達が、エリセから生まれたものを迎撃することで主人公達を支援する展開や、「エリセは残り、ボイジャーは行く」という結末は『hollow ataraxia』っぽさを特に感じました。
今回のイベントにおけるエリセも、『hollow ataraxia』におけるバゼットも抱えている物語の根っこは殆ど同じですからね。ボイジャーとアンリを重ねてオマージュに仕立て上げるのはありというか。正直面白かったですね。

ただ監修前のシナリオを実装してしまったことは、そのシナリオを台無しにするレベルの大失態でしょう。
ここまでの失態は増殖バグとそれの修正に伴うロールバックぐらい以来ではないでしょうか。今年で六年目を迎えるゲームで、こういうことが起きてしまったのはちょっと驚きですね。やればすぐに分かるレベルで台詞周りがおかしいので、これを見逃して実装してしまったことがある意味凄いことなんじゃないかと。
で、この件について「なぜ発生したのか」という点が一切説明されてないのも凄いですね。

謝罪文には「喜びや楽しみを奪う行為」とありますが、そこを自覚しているのであれば、「再発防止に務める」という一文で示すだけでなく「なぜ発生したのか」も含めた再発防止策をちゃんと説明するべきでは?と思うのですが、まあ今回のイベント開催期間中だけで何度もアプリのアップデートが行われている辺りから大体の事情は……。

ライド型設計がモチーフの面白さを奪う

今回のイベントで個人的に一番がっかりしたのは「ライド型設計で、『ボードゲーム』というモチーフを殆ど活かせてない」という点ですね。
最初に開放されるモノポリーモチーフの「ガッポリー」と条件付きバトルだった「第四のゲーム」はともかく、他のゲームは本当に読むだけで選択肢を変えてもゲームの勝敗には影響せず、読んでいるだけでいつの間にかクリアになってしまっている。「そのモチーフを選んだ意味」も「そのモチーフだからこそ出せる(シナリオ以外の観点での)面白さ」も殆どなくて、「つまらない話が続いている」という印象しか残らなかったです。

特につまらなかったのは、「人狼ゲーム」でしょう。
「集団の中に潜んだ人狼が一体誰なのかを推理しつつ、自身の勢力の勝利を目指す」という人狼をモチーフに選び、ユーザーに「占い師」という「行動することそのものが全体に影響を及ぼしうる役職」を与えておきながら、ユーザーに出来ることは全て固定となっていて、「占い師」という役職が「やりたい展開を駆動させるためのシナリオギミック」以上になっておらず、吊る対象もユーザーに一切の決定権を与えられていない。
シナリオを読んでいるうちに勝手に占い対象が決定されて、勝手に吊られて、いつの間にかゲームが終わってしまう。
「何のためにこのモチーフを選んだのか」と言われると「人狼」という要素がほしかったからなのでしょうが、それにしてもユーザーからあらゆる選択を奪ってまでやることかというと疑問が残りますね。

第三のゲームはいつの間にか終わっていて、最後のゲームは「双六」といいつつも出来ることは「シナリオを読むことだけ(賽子はシナリオ進行で勝手に振られている)」というのも正直よく分からなかったです。

ガッポリーの詰めの甘さ

ゲーム内ゲームとして唯一実装されているガッポリーも、手放しで受け入れられる品質のものかというと、個人的には「厳しい」と言わざるを得ません。
「ダイスを振る→出た目の数だけ進む→止まったマスのイベントをクリアする→ダイスを振る」という基本設計こそ出来てはいますし、ただ単にシナリオを読み終わる程度なら軽く流せる出来だと思います。
ただ今回の目玉報酬である☆4ランサー宇津見エリセを宝具5にしようとしたり、高難易度クエストに挑もうと思うと事情が変わってくる。
なぜかというと、この2つに関しては「特定のマスに五回止まる」が条件になっているんですね。
このガッポリーは賽子によって止まるマスが決定されます。にも関わらず、「特定のマスに何度も止まること」を要求してくるのは、運要素と噛み合うかどうかをしっかりと検討したのか気になりますね。
「特定マスに何度も止まる」ということの苦しさを自覚しているのか、に「一二三賽」「四五六賽」「特定の目しか出ない賽子」なども用意されてはいますが、イベントショップで交換できる量はそこまで多くないので救済措置にはなっていない。高難易度クエストに挑もうと思うのなら、「各賽子20個まで交換可能」は気休め程度でしょう。
使い切ってもイベントクエストを回れば手に入れることが出来ますが、それも確定で手に入るわけではないので、最終的には「運ゲーを攻略するために必要なアイテムを運で手に入れる」という意味のわからないことになってしまっている。

正直「ガッポリーに関連している個々の要素を、しっかりと検討しきれてない」と思います。
イベントショップで交換できるダイスの数は今の倍でもよかったし、なんなら交換個数は無限でも良かった。「特定マスに移動する」というイベントも、何周かすると「移動するかどうか選択する」という形にも出来たのでは?
色々な要素で基本設計の良さを殺しにいくのはよくないですね。

最後に

「ダメなイベントか」と言われるとダメなイベントであることは間違いないですし、そのダメさ加減も無視するにはあまりにも厳しいものばかりなので「どうしようもない」と思うのですが、過去の「ダメなイベント」と比較すると方向性が違うというか。
「テスト不足や調整不足」ももちろんあるんですが、それに加えて「不具合が発生しやすいところをバッサリ削った」という印象が強くて、「未完成では?」という疑惑すら思い浮かんでしまう。
もちろん「未完成では?」というのは私の考えなので、「今は少なくともクソイベでしょ」という点では全くもって同意なのですが、大奥クラスかというと「基本設計の段階で面白くなりようがない」という大奥には勝てないかなと。打順で言えば7番ぐらいだと思うのです。
ただ「コラボでこの出来」ということが最悪なのは確かで……うーん。

まあ次のイベントこそ時間をかけて何とかしていただきたいですね。

プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。