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「秘密」で特別な関係による刺激的な面白さが『ひみつのアイプリ』にはある

『ひみつのアイプリ』が面白いのです。「今期は『ガールズバンドクライ』と『終末トレインどこへいく?』と『ひみつのアイプリ』があるから大体勝ち」と言えてしまうぐらいに。
「メインスタッフや制作会社を一新してのアニメ展開の再始動」と聞いた時には期待と不安が入り混じり、「何も分からない!」「とりあえず見て判断!」と考えていましたが、1クールの終わりを迎えつつある今の気持ちは「文句なしに面白い」。
過去作品で支持されていた要素を抽出して本作ならではの「秘密」というワードを効かせてまとめた『ひみつのアイプリ』は、どこか少女小説のような趣きとこのシリーズらしい俗っぽさが素晴らしい。
おかげで毎週欠かさず見ているのですが、やっぱり「秘密」ってものが面白いんですよね。強いなと思います。

秘密は誰にでもある

私が面白く感じているのは「秘密は誰にでもある」を前提とした物語が展開されていることですね。「秘密そのもの」ではなく「秘密があることで生まれること」を中心に物語が展開されているのです。
主人公である青空ひまりも星川みつきも、物語を開始した当初はアイプリ(=本作におけるアイドルに該当。正式名称は「アイドルプリンセス」)として活動している事を秘密にしていました。
これは「一緒にアイプリしようね」という約束を幼少期に交わしていたからなのですが、この秘密と「お互いに秘密にしたい理由がある」という前提を作ることで、うっかり正体を明かしかけた時には緊張感が生まれた展開になるし、秘密にしていることに負い目を感じている展開には相手のことを思いやる優しさが感じられる物語になっている。
ひまりとみつきがお互いがアイプリであることを明かした後は「アイプリであること」は「二人だけの秘密」となりましたし、屋根裏にあるアイプリへの扉も「二人だけの秘密基地」のようになるなど「秘密を共有する特別な関係性」が展開されており、後述しますが「秘密を共有する特別な関係だからこそ」な展開が用意されているなど、次から次へと展開される「秘密」から始まる物語は毎週欠かさずチェックしたくなるほど飽きる事はありません。
こうした要素は主人公達のだけのお話ではないことも面白い点ですね。
メインキャラクターのうち四人が所属する生徒会は、「自分達もアイプリであること」を秘密にしていることを始めとして「ひまりのアイプリ活動を支援する理由」や「大会を開催する理由」すらも自分達だけが共有する秘密にしており、ひまり達とは異なる目的で動く「第二の勢力」としてひまり達と共に物語を盛り上げている。
いわゆる日常回についても、例えば「姉がプレゼントしてくれたリップを失くしてしまい、それを探すために皆には秘密で探している」といったエピソードがあったりするし、王道的でもある「迷い猫を秘密で保護する」というエピソードはエピローグがゲストキャラだけの秘密な関係になっている。
「打ち明ける」という展開になることもありますが、それも含めて『ひみつのアイプリ』は「誰にでも秘密はある」が根底にあって、誰がどんな秘密を持っていても「秘密にしたい想い」があるはずだ!とする物語はとても良いですね。

私も知らない秘密の私

「秘密は誰にでもある」は「自覚している秘密」ですが、「私も知らない秘密の私」、つまり「無自覚な秘密」も物語を盛り上げてくれている点ですね。
要するに「自分が思っている以上に自分のことは見えていない」ということなんですけど、それを自覚することで人間としても、アイプリとしても強くなる事が「成長物語としての面白さ」を作っているな!と思います。
生徒会長なんかは特にそうでしたね。
ひまりにこだわる理由として様々な理由を上げていた生徒会長でしたが、それを一番傍で見ていた副生徒会長からは「本当はそうではないでしょう」と言われてしまう。
その言葉で自分が「もっともらしい理由を並べていたけど、本当はこういう気持ちがあったからひまりにこだわっていたんだ!」と気づいた生徒会長は、人間的にもアイプリ的にもパワーアップ。ひまりを一蹴して大会でも優勝を成し遂げる。
こういう「自分を知ることでのパワーアップ」というのはそこまで珍しいものではないし、プリティーシリーズの過去作品でも見かける展開なんですが、それをしっかりと物語に込めて『ひみつのアイプリ』らしい展開にしているので、驚きと面白さがあるんですよね。
まあ生徒会長に気づきをもたらした副生徒会長は「会長が一番輝いているところを最前線で見たいので、アイプリをやってるし会長とデュオを組んでる」という恐ろしい存在なんですけど……。ユーザー的には一番秘密にしておいてほしかった重い関係性な気がしますね!

秘密にすること/されることの暴力性

そして最近になって顔を見せ始めたのは「秘密にすること/秘密にされることって結構残酷なことだよね」という点ですね。
秘密を共有する仲が特別なら、秘密を共有されなかった仲もまた特別。「私には話してくれなかった」という疎外感や「私達だけの秘密じゃなかったの?」という相手への不信感といった要素が、少しだけですが出始めている気がします。
特に「幼馴染で、ずっと一緒に過ごしてきて、『一緒にアイプリをしようね』と約束をしていて、やっとその約束を果たすことが出来た」というひまりとみつきを丁寧に描いた後で、「ひまりには「つむぎ」というみつきの知らない友達がいる」「そのつむぎにひまりは『みつきといつもやるおまじない』をしようとする」という最近あった展開はひまりとみつきの関係にヒビを入ってもおかしくない。
二人は中学生なので軽い嫉妬のようなものでしたし、みつきとつむぎが「どちらがひまりのことを好きか」で競い合う姿は面白かったんですけど、でもこういう「秘密にする/される」というのは人間関係を破壊しかねない危うさを秘めたものであることを忘れず、しっかりと描いてきたのは今後を見る上でも大事なんじゃないかなと思います。みつきとつむぎ、結局一時的な休戦協定を結んだようなものですからね。

結びに

この他にも「適当なアドバイスを送ったらそれを真に受けた後輩に自分ができないことを一発で成し遂げた上、お礼まで言われてしまう」という尊厳破壊的な体験をした真実夜チィとか、生徒会の面々の伸び白とかもっともっと面白くなりそうな要素はあるんですけど、何はともあれ音楽が良いのも大事ですね!

シリーズのアニメ展開復活を待っていた人間にとっては、この音楽だけで「大丈夫そうだ」と思っちゃう。
上記に取り上げたのは作中では二番目に披露された楽曲なんですが、これが二番目というだけで評価したい。三番手か四番手なら分かるけど、これが二番手!攻めてますよ!
今後の展開も新曲も楽しみにしております。
また日曜朝11時までがニチアサだ!!

プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。