『フルメタル・パニック!family』を読んだ。楽しい読書体験だった。

「趣味は読書」と言いつつも「趣味」から遠のいた読書を続けてきた。
最後に「趣味」で本を読んだのはいつの日だったか。
津原泰水の『ヒッキーヒッキーシェイク』の頃か?小川一水の『ツインスターランナウェイ』の頃か? それよりもずっと前か?
その記憶の尾すらも掴む事ができなくなって久しいのだが、先日ある本を購入したので意地と努力と根性で完全な「趣味の読書」を行うことが出来た
そのある本とは『フルメタル・パニック!family』。
我が思い出の作品である『フルメタル・パニック!』の続編に当たる作品なのだが、「続編」と言っても『フルメタル・パニック!family』は本編ほど大きな物語が展開されているわけではない。
どちらかと言えば短編集(アニメで言えば『ふもっふ』)のような作品で、
本編完結から20年後の世界を舞台に、相良宗介と千鳥かなめ(結婚したので現在は相良かなめか)、そして二人の娘と息子の日常を描いたホームコメディとなっている。
本編から20年も経過しているので相良宗介も千鳥かなめも良い意味でタフな人間になっていて、今もなおかなめを狙う奴らはすぐに退場する羽目になるし、娘や息子も「この二人の子供だぞ!」と言いたくなるぐらいタフでポジティブだしで今後を不安視するような要素は微塵もない。
あるとすれば「この家族に安住の地はあるのかどうなのか。あったとしてそこはどんな場所なのか」ぐらいだが、この物語を畳む時には自ずと分かることなので何も言うことはない。
ただこの作品に貫かれた「まあこいつらはこういう奴らなので、20年間もこんな感じでやってきたし、これからもこんな感じでやっていきますよ」という手触りが心地よい。
あれからちゃんと日常が続いてきたこと、あの原作から地続きであることがよく伝わってくる。
大人になって、親になって、色んな変化はあったけど、「こいつらはこいつらなんで」という適度な距離感に、読んでいて安心させられてしまう。描写の端々から「ちゃんと今日まで生活してきたんだな」という重みが感じられるのだ。
その辺はゲストとして登場するキャラクター達も変わらないのだが、林水会長閣下だけは違っていて、そこが凄く良かった。
「もっと望んで良い。どうなるかなんて誰にもわからないんだから」と相良宗介に言えるのはおそらく彼だけなので、そんな人間がいることも今回も友人として接してくれているところにぐっと来た。大人になると貴重だ、そういう友達……。
それにしても久しぶりに「趣味の読書」をやって良かった。
時間に追われることなく、何らかの形で反映できるかどうかを考えながら読むのと、楽しむためだけに読むのは違う。だから自分が楽しむためだけに読む読書が出来てよかった。
これも全て賀東招二が『フルメタル・パニック!family』を書いてくれたおかげだ。久しぶりに楽しい読書体験が出来たことを何より感謝したい。
ところで第四世代、マジ?


プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。