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あの日とあの日と、今日のカラス

今日、鳩のヒナがカラスにさらわれていくのを間近で目撃した。ヒナの真っ黒な二つの瞳が私を見つめていた。
ほんの少し、その光景にショックを受けた。

あの日の"間違い"とあの日の"正解"を思い出した。

何年の何月かは全く記憶にないけれど雨上がりのじんわりとした空気は今でも鮮明に覚えている。
外が暗かったから、夜の出来事だったはず。
帰り道の真ん中になにかを突いているカラスがいる。
近づくにつれ、そのなにかの正体が大きなアマガエルだと気付く。
私は考えるよりも先に体が動き、カラスを追い払ってカエルを助けようとした。
だけど、カラスは譲ってはくれなかった。
その姿をみて自分がどれだけ愚かしい行動をとったか気づかされた。
自然界を必死に生き抜くものの邪魔をしてはいけない。


北海道の田舎道を自転車で走っていると道端に座って鳴いている変わったカラスがいた。
近づいても全く逃げない、いや、逃げられない状態にあった。どうやら足を怪我したようでその場から動けなくなっていた。
田舎だったおかげで、周囲に人間はいない。
北海道自転車ツーリングの真っ只中だったから、幸い食料も豊富に持っている。
必死に鳴き声をあげるカラス。
せめて、最後になにか食べ物でもあげようか。
このままここで一人ぼっちで最期を迎えるのはかわいそうじゃないか。
全く逃げない"不自然なカラス"を見つめながらしばらく葛藤した。
今、ここで何かを与えてもこのカラスは数日以内に必ず生き絶える。
カラスに背を向け、ペダルを踏んだ。
あの日の胸の痛みはいまだに忘れられないけれど、それすらも人間の勝手な振る舞いだと理解しているつもり。


ハトのヒナと目が合った瞬間にまた同じ過ちを犯しかけた。反射的に体が動いてしまった。
思いとどまった。
ヒナの親の姿もみた。それでも、踏みとどまって結末を見守った。
自分の置かれている状況を理解するにはあまりにも幼いヒナの黒くて丸い瞳は、初めて見る二足歩行の生き物を不思議そうに見つめた。
ほんのわずかにカラスに立ち向かった親のハトはすぐに諦めてしまい、ヒナはすぐさま連れ去られてしまった。
あの幼い真っ黒な瞳。また忘れられない出来事が増えてしまった。

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