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てぃくる 264 赤く染め

(カンナ)


 
顔が赤くなったのを夕日のせいだってごまかして、いつもの辻でばいばいと手を振る。それでも、わたしが赤くなってたのはあいつにばればれなんだろう。だって、あいつの顔も夕日でごまかせないくらい赤くなってたから。

 でもね、あいつの背中が見えなくなってすぐ。わたしは俯いてしまうの。少しずつ、恥ずかしさの赤が寂しさの赤に入れ替わる。心を染めた赤い色が、過ぎ行く夏と一緒に褪せていってしまうのは悲しい。

 わたしはまだ目を赤くしたくない。そこを赤くするのは、最後の最後にしたい。だから……。

「まだまだこれから……よね。うん」

(2016-09-19)

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