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てぃくる 635 誰が知るや

 緑なす頃は、誰からも厄介者扱いされていた。
 緑を失った今は、誰からも認知されていない。

(枯れたヒメムカシヨモギ)


「昔は誰でも知っていたが、今は誰も知らないってのは、いいことなんかな」
「さあ。芸能人ならそれは寂しいし、悪党なら喜ばしいんだろう」
「そうか? 忘れられたことを喜ぶ引退芸能人もいれば、世間から忘れられることを拒んで悪事を重ねる悪老人もいるだろ?」
「俺は芸能人でも大悪人でもないからわからんわ」
「それもそうか」

☆ ☆

 知られていようが知られていまいが、新たな種子は四方に飛び、そこに新しい個体が育つ。
 どんな形でそこに在ろうが、知られるものは知られ、忘れられるものは忘れられる。


霜の叙勲 名もなき草を輝かす

(2020-01-30)

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