てぃくる 121 冬に咲く
「どえれえ寒いな」
「ああ。口ぃ開くのが億劫だ。何も言いたくねえ」
「いつも、そんくれえにしててくれや」
「口の減らねえ野郎だな」
「口が曲がってるおまえよりゃあましだ」
「けっ!」
☆ ☆
とげとげの、ノゲシ。
寒くても咲きますね。寒いから咲く、ではありません。咲き残り、でしょう。
霜で傷んだところが引き攣れて、きれいに開かない。それでも、花は咲きます。
訪花してくれる虫がいなくても。それでも、花が咲きます。
ひっそり咲いては、またしばし沈黙する。それを……冬の間ずっと繰り返します。
まるで、火種を絶やしてはいけないとでも言うかのように。
雪に灯る蝋燭一つ手で囲ふ
「ぬくいのう」
「せやな。これなら笑えるわ」
「はははっ」
「はっはっはあ!」
「ゼニはちぃともあらへんけどな」
「そらあ、笑うしかあらへんやろ」
「せやな。あっはっは!」
「わっはっはっはっは!」
☆ ☆
寒菊。
こちらも残り花ですね。薄日を受け、庭の隅っこでこそっと咲いていました。
周りは枯れ草ばかり。でも、それを布団として羽織るように。暖かさが残る間は、まだまだ咲けるんだよと言わんばかりに。
ほっこりと。咲き並んでいました。
冬日向殿と姫の手温める
(2015-01-03)
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