見出し画像

てぃくる 830 褒め方が悪い

「でぶ」
「恰幅がいいんだ」

「てかってる」
「輝いているんだよ」

「はげ」
「怪我ないんだ」

「パンツの趣味悪い」
「んなもん、履いてないって」

「えぐい」
「渋いと言ってくれ」

「ほんと、おまえは褒め方が悪いな」


誰も褒めてねえよっ!


 トチノキ
の堅果。残念ながら煮ても焼いても食べられたものではありません。でんぷんをたっぷり含んでいますから利用価値は十分あるんですが、あまりにもエグい。そのまま食べても喉を通らないと思います。

 いわゆるドングリの類には、渋いものがいっぱいあります。渋みやえぐみの成分はタンニンであることが多いんですが、栃の実の場合はサポニン。タンニン以上に刺激が強く、有毒かつ不味なので、徹底的に渋抜きをしないと食べられません。サポニンは水溶性なので、灰汁で煮たものをえぐみを感じなくなるまで何度も水に晒し、渋を抜きます。
 そこまでして食べたいかなあと思ってしまいますが、昔は山村の貴重な備蓄食糧でした。栃の実は安定して収量を見込める上に、えぐみのせいか干した実が虫やネズミの害を受けにくく、保存性が高いんです。飢饉に備えて備蓄しておくのにぴったり。うまいまずい以前に、とても重要だったんですよね。
 今は製菓業者さんが渋抜きした栃の実を餅やせんべいに加工し販売していますが、素人が上手に渋を抜くのはなかなか難しいと思います。

 でもねえ。見た目にはとてもおいしそうなんですよ。親子連れが茹でて食べようと話しているのを見て、思わず苦笑します。

「どうなっても知らんぞー」


栃の実を拾うおうなは丸くなる

(2021-09-12)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?