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てぃくる 146 真昼のお化け

「真昼のお化けは怖くないよね? だって、見えないもの」

 彼女はそう言うと、目の前にある何かを振り払うようにぱたぱたと手を振った。

「ふうん……。僕なら逆に考えるけどなあ」
「逆?」
「そうさ。見えるものは怖くないよ。怖いのは見えないものさ」
「……」
「だから、夜のお化けは怖くない。見えるからね」

 僕も、目の前にふわふわ飛んでいるものを捕まえるように、手を出してぎゅっと握った。

「見えない、昼のお化け。そっちの方がずっと怖いよ」

 僕も彼女も、誰の目にも見えない存在。
 そうさ、僕らは真昼のお化け。本当はとても怖いのに、誰も怖がってくれない。

(シラカシの芽吹き)


春愁う心も知らず粉薬

(2015-04-22)

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