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てぃくる 429 便利だけど

「日差しがきつなってきたさかい、日傘さしたいなあ思うねん」
「せやけど、男で日傘はないやろ」

「そうなんや。せやから、左手を傘にしてみた」
「はあ!?」

(ハアザミの花)


「便利やで。手をかざすだけで日差しをさえぎれるねん」
「それえ……左手使えへんがな」

「なんとかなるもんや。利き手やないさかい」
「そういう問題ちゃうがな。傘以外に使うことの方がずっと多いやろが。あほか」

「日常生活には支障ないねん。それよか……」
「なんや?」

「シオマネキって言われるのがつらいねん」
「おまえはカニ以下やな。だあほが」

☆ ☆


 便利なんだか不便なんだかようわからんな。時々そうぼやきたくなります。
 昔は携帯やスマホどころか、電話すらないこともあったわけで。その分だけ約束やスケジュールの束縛がゆるく、おおらかだったように思います。

 便利さや快適さを突き詰めるのがいいとは限りません。
 自分のどたまの出来の悪さを棚に上げてユーザーフレンドリーなんざまやかしだと毒づき、機能が使えるようになったらなったで便利さのぬるま湯に浸かりっぱなしで能力や感性が鈍麻する。恩恵をこうむるはずの我々自身が、融通の利かない不便な存在のままですから。

(2018-06-25)

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