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てぃくる 741 いい色ですね

 いい色ですね。
「色々試して、この色に落ち着いたんだ」

 どんな色を試されたんですか?
「色狂いと言われない程度の色」

 英雄色を好む、ですか。
「英雄なんかじゃないよ。せいぜい毛色の変わったやつ、くらいで」

 それでも色を選べたんですね。
「男の色香があったからな」

 今は?
「色褪せてるよ、あまりの劣化に色を失ってる」

 でも、いい色じゃないですか。
「好い色、か。好色と同じなのに色が違う」

 書き方次第で色気が出ますよね。
「それで色良い返事がもらえればいいんだが」

 実際は?
「色眼鏡で見られて終わりさ」

(メタセコイアの紅葉)


 
それは。
 一色ひといろに見えて、濃淡明暗さまざまに揺れる色。

 極彩色すら見分けられない頃には、色に溺れ。
 わずかな色彩の違いに心を揺らされる時には、色が枯れている。

 どの色が好いのかと聞かれた時には、自分の色に気づかず。
 自分の色を手に入れると、それに合う他の色を見失う。

 なあ。
 君から見て、僕は何色だい?


鈍色にびいろの雪雲崩れ空は白

(2020-12-10)

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