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てぃくる 1006 双頭

 双頭は、それぞれの頭が別方向を向いている。互いに見つめ合うことはない。
 視野を広くして見出せるものを増やすためというポジティブな解釈もできるが、互いにそっぽを向いているため何一つまとまらないという諧謔にもなる。
 だが。実際に頭が二つなくとも、我々はしばしば双頭になる。是か否かの判断が即座に下せぬ状況下では、二つの己がせめぎ合うからだ。どちらも己であり、どちらに従っても選ばれなかった方が口汚くなじるのだ。俺の身を勝手に使うな、と。

 双頭が厄介なのは、頭が二つあっても動かせる身が一つしかないことなのだ。その上、身はしばしば頭の命令を無視する。動かなかったり、勝手に動いたり。
 ああ、頭は一つだけでいい。二つあっても知能が二倍にはならないのに、二日酔いの頭痛は二倍になるからだ。

「おっさん、おっさん。俺らはどっちも頭じゃないんだけど」

◇ ◇ ◇


 大きくなりすぎたユリノキの梢を落とした時、切り口の周囲から伸びた新梢が二つ立つことがあります。どちらか一方が優勢になれば単なる芯替わりですが、画像のように並立すると独特の樹形になりますね。

 優劣を常に求められる味気ない世の中ですから、互いにそっぽは向いていても双頭で存在し続けられるというのはむしろ幸せなのかもしれません。


 そんな自分でいたくない と思ったら
   頭が二つになっていたとさ

(2023-04-28)

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