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2024/06/12 日記


・遮光カーテンを開けた窓からの光だけが射し込む、薄暗い昼間の部屋でベッドに横たわっている。除湿設定で薄くかけたエアコンの稼動音だけが響いて、私はぼんやりと目を開いていた。
目が覚めている、思考が散乱している、感覚が鋭敏になって嫌になる。
白で揃えた寝具の中で、それが好きなのにそれとは似つかわしくない私が1日を無為にしている。

・ホットケーキを焼いた。さほど食べたいとも思わなかったけれど、手が動くままに従った。
卵の比率を多めに作ってみたら普段より分厚くてしっとりした、割と好みの味に出来上がった。
バターをうっすら塗って食べているとなんとなく満足した気分になったので、洗い物を済ませてまたベッドに囚われにいく。

・ここまで気分が落ちるのも久々だ。数日の間1日布団に刺さってぼーっとしている以外に何も出来ていない。自他ともに対して鋭利な思いを抱きがちになってしまって、この状態で誰にも関わるべきではないなと判断するから、助けを求めたくともフリックキーを滑らせる指は動かない。
だからこうして誰に宛てるわけでもない文章を書いている。そんな間も緩やかに増す鈍い頭痛が煩わしい。

・最近知った言葉で52ヘルツの鯨というものがある。その鯨は鳴き声の周波数がほかの個体より随分と高く、すなわち誰ともコミュニケーションがとれない「世界で最も孤独な鯨」なのだそうだ。
広大な海で確かに自分は声を上げているはずなのにそれが誰にも届かない。想像すると確かにひんやりとした恐ろしさを感じる。同時に、一抹の親近感も。
では、誰にも届かない声は無価値であるのか?
そういう訳でもないだろうと私は思っている。仮に誰にも届かなくとも、声を上げること自体が己の存在を担保してくれる。そして声を上げるだけの力がまだ自分には残っていると知ることができる。鯨にとっての鳴き声は、私にとっての文章らしい。


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