2021年の作品

画像1 2021年は生け花を始めて20年という節目の年でした。まだ6歳だった頃、お花の名前もろくに覚えられず、花鋏で手を怪我することもしばしば。それが今では古くから伝わる伝書を読んで見よう見まねで練習したり、やつれている子はいないか花の表情をじっと観察するように。一度も辞めたいと思わずにここまで続けてこれたのは、息をのむような作品を小さい頃からみせてくださった池坊華道界の先生方、師匠と兄弟子の皆さんのお陰です。
画像2 2021年のお正月は福岡の清流庵という旅館に作品を飾る機会に恵まれました。日本文化には多くの型と決まり事があります。お正月にはよく松竹梅に加えて南天を生けますが、南天は「難を転じて福となす」に通ずる縁起木と言われ、新年を迎えるに相応しいとされています。
画像3 ちなみにここ秋月温泉の清流庵は2400坪ほどの広い庭園の中、たった6室の客室という贅沢な造り。足立美術館の「生の掛け軸」を思わせる、絵の世界でしかみられないような景色が窓の向こうに広がる素晴らしい旅館です。御来福の際は是非。◾️http://www.seiryuan.com/
画像4 「葉が辿った道」 青々とした葉、威厳のあるブラック・リーフ、枯葉を思わせる黄味がかった葉。どれも生き生きとした生命を感じさせます。 雨風で破れた葉、虫に食われた葉、枯れかけた葉であっても生け花では作品に使うことがあります。植物も人間と同じで、生を全うする姿、生きる意志を感じさせるものは美しい。若さが全てではないんですね。 厳しい自然の中で最後まで生き抜こうとする植物の強烈な生命力に、花を生ける度に圧倒されます。
画像5 「梅雨の晴れ間」 梅雨の晴れ間、陽光を浴びて心地よさそうな花々。ちょっと元気のなかった紫陽花にしっかり水をあげたら生き返りました。
画像6 「蛍舞う夜」小さい頃から好きな初夏の川辺の景色。
画像7 「姫蛍の舞」少し雰囲気を変えて姫蛍が舞い遊んでいる風に
画像8 室町時代から続く花型「立花(りっか)」。もちろんこの時代に洋室はありませんが、案外立花と洋室の組み合わせっていいと思うんです。
画像9 「お盆」迎え火で蝋燭を灯してご先祖様をお迎えしました。
画像10 お盆の迎え火を食卓の飾りにも移しました。
画像11 「晩夏」この作品を生けた時、花屋さんにはもう秋の花が並んでいましたが、夏に向日葵をいけられるのはこれが最後かもしれないと思い、残暑らしい茶色がかったサンリッチマロンという向日葵を使って立花をいけました。サンリッチマロンはゴッホの「ひまわり」を思わせる色合いです。
画像12 「色遊び」絵具で色をつけたような色彩のカラーピカソを見つけたので、ピカソ晩年のカラフルかつ激しい画風をイメージして作品をつくりました。
画像13 友人の家でトトロの置物を見つけたので、チェーンソーで切った木材を台にしてトトロの世界をつくってみました。マックロクロスケは外に落ちていた栗を黒く染めたものです。お花が少なかったのでちょっと寂しいですが!
画像14 2021年9月筥崎宮にて池坊の献華展が開催されました。僭越ながら私も作品を出瓶する機会をいただきました。
画像15 華道の道を究めた先生方・先輩方の作品が並び圧巻でした。「いつかこんな作品をいけてみたい」と思い続けて20年。
画像16 「火の鳥」神話に出てくる不死鳥ですが、あれは死なないのではなく、寿命を迎えると一度炎の中に飛び込んで死を迎え、その後に蘇るという設定らしいです。
画像17 花器からの発想。芸術の世界では人間の手により造形すること、人間の理想を作品に映し出すことを、自然表現(自然的表現)と対比して意匠表現といいますが、そもそも自然を用いる生け花と意匠表現との相性ってどうなんでしょう?
画像18 同じ花材のまま花器を変えました。「昨今の生け花は芸術の域に達していて表現力が強すぎる。しかし生け花というのは芸術ではなく文化であり、草花を通じて人の心を和ませるものであるべきではないか。花一輪の優しさで人間の心は安らぐ」という、池坊のある先生の言葉が印象的でした。
画像19 「紅葉」お花屋さんで色とりどりの葉をつけたベリーの木を見つけて「ついに紅葉の季節が来た!」と迷わず手に取りました。でも実は紅葉した葉は傷みやすくて、お店に並んでいるときすでに葉はしおれていたんです。持って帰って葉一枚一枚に裏打ちして、ハンドクリームを塗って、お水に浸けてしばらく待つとこんなに活き活きとした輝きをみせてくれました。2021年の秋はイギリスにおり日本での紅葉はみられませんでしたが、10月にこの作品をいけて早めの紅葉を楽しみました。
画像20 2022年は京都での稽古、そして2 月20日(日)には福岡の歴史ある太宰府天満宮で開催される、献華祭の参進の儀に参加します。溢れるほどの花を乗せた御所車を牛が引き、池坊奉仕者が参道を練り歩きます。本殿では生け花の神前奉納もありますので是非御参りください。

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