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絵本担当と出版社②

拡材商法

絵本が入荷し、さてどうやってそれらを並べようかと考えるに当たり、手元に拡材があるか否かはその絵本の展開場所を左右します。

拡材は、書籍を平積にした時に目に付きやすいという効果があるし、popで絵本の内容が分かりやすくなったり、装飾の小物を使えば売場でのその絵本のインパクトも強くなります。

そこで、自分が思う売れそうな本や、売りたい絵本は出版社に拡材を依頼をします。

ちなみに、<拡材>という単語に馴染みのない方の為に補足すると、書店における拡材とは『拡大販売のための材料』の事を指し、具体的にはポスターやpop、販売台、DVDなど店舗で使用するための物とハガキやシール、包装紙等お客様への頒布用の主に2つに別れています。

絵本担当が書籍の拡材を手に入れる方法には

1.出版社から送られてくる新刊発注書に発注時に拡材希望の旨を書き込む

2.出版社の営業さんに拡材を直接頼む

3.新刊配本時に取次から書籍と一緒に搬入する
又は出版社から店に封書で直接で送られてくる

主にこの3つがあります。

今回、題名にした<拡材商法>と私が密かに名付けているのは上に挙げた拡材入手方法の中の3番目に関係してきます。

すなわち、出版社が、こちらの希望の有無に関わらず拡材を送ってくる場合。
“この希望の有無に関わらず”というのがポイントです。

出版社が販売台を送ってくる意図は書店の‘目立つ場所での新刊書籍の平積販売を確保すること’なのでしょう。

しかし

カードpopや装飾用小物はまだ良いのですが、
頼んでいない平積用の販売台が送られてきてしまうと、書店としては、それらを使って展開せざるを得ません。

出版社の側からすると担当者へのリマインドの意味もあるのかもしれません。
しかし、これらを保管したり、発売日に気にして装飾作業を行わなければならないのは負担です。

新刊絵本の入荷が1冊しかないのに拡材3点セット(販売台、pop、シール)が送られてくる時もあります。
入荷数が1冊のみということは、事前にこちらから発注をかけていないということ。

つまり、あまり売りたいと思っていないということです。

目立つ場所に置きたくないと思っている絵本を、拡材商法により、自分の意思に反して目立たせる作業は、書店員にとっては結構苦痛です。 

以前の記事にも書きましたが、新刊絵本販売の勝負は発売から約1ヶ月で決まる。そこで売り逃すと挽回は難しいというシビアな現実があります。
そこで、この<拡材商法>がよく行われるのでしょう。

あくまで私の印象ですが、この手法を行うのは大手とか、絵本に最近参入し始めたビジネス系の出版社が多いです。


良い絵本なら、少ない入荷数でも目立つ場所に置くし、出版社や本部押し絵本で入荷数が多くても、あまり良くないと思う絵本は、目立つ場所には置かない。
大量の新刊絵本の入荷を前に、毎日そんな風に考えながら作業しています。
これは、お客さんに良い絵本に出会ってほしいと思うからです。

しかし、拡材商法は、書店員に選択や工夫の余地を与えないやり方です。自分達の絵本のみ売れれば良い(ちょっと大袈裟にいえば)という感じです

本を作ってくれるのは出版社です。

でも、販売する書店としても、責任を持って勧めたいと思っているのに売り方まで指示されるのはちょっとなぁ〜

と日々品出しをしながら思っています。








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