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母の箪笥

探し物があり母の箪笥を開けると

玉虫

以前も見た気がするが
こんな粉末は無かったはずと母を呼ぶと
つまんだ玉虫は七色に光る外側だけになっていて
身体はすっかり粉末状に分解されていた
タンパク質は分解されるのか?ではこの周りは一体何なんだ?面白い

そして上から触れていた衣類には小さな別の虫がプチプチ付いていた

昔はよくあった光景なのだろうか
祖母の箪笥にも玉虫がいたのだろうか
いなかっただろうな

粉末を手でひとつまみした母
玉虫入れとくと着物が増えるんですって
もう増えても仕方ないけど
いいわこのままで
とまだ残る粉末の上にポイっと形が崩れた玉虫の光る抜け殻を置いた

昆虫が好きだという母
関連する本も多々読み、数年前は一人で昆虫博へ行っていた

セミの死骸が鏡台に置いてあった時はギョッとしたがすっかり見慣れた
とはいえたまにうっかり凝視してみるとお目目はいつまでも爛々光り何だか気持ち悪くなる

もういらないものはどんどん処分せねばと言う母

どんなものが残るのだろうか

母にとって大切なもの、手放したくないものは何なのだろう
 
8割5分想像がつくけれど

残りは分からない

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