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【刀剣短歌】江水散花雪によせて/正しさに隠された君のかなしさを

20220317江水

江水散花雪に寄せて/刀剣短歌

正しさに隠された君のかなしさをあの日の果実に書きつけておく


南泉一文字

(ひだまりをあげようぴんとひげを立て帰っておいでしもやけの足も)
手のひらで陽だまりを囲う冬蜜柑なごりの雪を溶かすな今は
ぬくもりを許す、背伸びで歩き出す。刃こぼれの爪は研がずにおくさ

小竜景光
(思い出はいつも優しい台本に書かれぬ台詞の行間ほどに)
さよならの数だけ巡り会うのだろう冬の渚に寄せ帰す、白
そうっとね零さぬように口角を上げる(それから、風を見上げて)

大包平
(誰よりも、と願うなら立てだれよりも柔らかな水で顔を濡らして)
学んでも知らずにいた事 地に着いた手のひらの傷も誇りである事
立つための足だ二本の 勇気とか強さだなどと名付けなくても

和泉守兼定
(美しく終わりをつづる神の手がまことであると誰が決めたか)
遅霜に萎れてもなお咲くのだろう花よ 傘は開かずにおくぜ
生きているからこそ朽ちゆく花の香を色を忘れぬ愛となづけて

山姥切国広
(水面にも映らぬ花のまなざしを見上げよ獣あおきその眼で)
進まない季節の中で永遠に花よ、花よ、咲いているのか
雪片は空からの文 受け取ればはかなく消える嘘つきな冬の

肥前忠広
(ふみにじり穢された雪のはじまりの白は雪のものだよ永久に)
花籠に盛られる棘なき一輪の花でありたかったのかよ、野の薔薇よ
うつくしく咲く花を選ぶ美しき手であれと望まれて、(俺は)


開かれた書物に書くな「幸せ」も「不幸」も神の御心のそと


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