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サヨナラよりも悲しいものを 私はいくつ数えただろう 届かなかった言葉を捨てて 明るいひなたを歩くこと 二度とは会えないだれかはいつも 写真の中で笑うこと 消えたい命のその傍らで 季節がただしく進むこと サヨナラよりも愛しいものを あなたはいくつ知るだろう こごえる桜の梢の先に ほんのり春がにじむこと 二度とは会えない誰かの声が
雲の詩沫さんのTwitter企画参加。「陽に溶かす」 穴を掘っていた。 母は穴を掘っていた。 二月の土は固く凍り、掘りつづけた穴は丸く、黒々と口を開けていた。 (ああごしてえ、ごしてえなあ。 年を取ると身体がしんどくてなあ。 ずくもなくなるし家の中も外もささらほうさらでせえ) 台所では味噌汁が湯気を立て、氷の張った桶から出された漬物は青々とし、 正しく冬であった。冬以外の何者も訪れる事はできなかった。 私たちのあの庭には。 そして私たちは穴を掘り、埋めたのだ。 一つの