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巴の龍#3

ドサッ!

弓に射抜かれた山鳥が 止まり木から落ちた。

北燕山(ほくえんさん)

昨日の雨が嘘のように晴れ渡っている。

まさに狩り日和。

この山の奥に住んでいる大悟(だいご)は、

変わりやすい山の天気に嫌というほど

悩まされてきた。

雨や雪が続くと、父と二人じっとして空腹に耐える。

瓶(かめ)の水が底をつき、雨水や雪で飢えをしのぐ。

だからこそ、晴れた日は少しでも獲物をとり、

干物などにして保存しておく。

今日は父も樹林川(じゅりんがわ)に行っているはずだ。

帰りに野草や薬草なども採って帰るつもりだ。

ついこの間まで父と一緒でなければ

狩りは許されなかった大悟だが、十五という年を迎えて

この春から ひとりで狩りに来ている。

幼いころから父に学んだ太刀筋も悪くないが、

狩りには やはり弓が向いていた。

そして 大悟自身、太刀より弓が好きだった。

大悟が落ちた山鳥をひろいに、

木の根元まで来た時だ。

ボロ布のような かたまりが目に付いた。

泥にまみれた そのボロは 人の着物に見えた。

近づくと黒いながい髪が着物にからみつき、

ためらいながらも その髪にふれると、

ビクリと ふるえた。

「人だ」

と とっさに大悟は 思った。

この北燕山に住みついて十四年

父以外の人を見たのは初めてだった。

大悟は 恐る恐る ボロをまとった人を

抱き起こし、そのままかついで 父と住む

小屋に向かった。

「なんだ、早いじゃないか大悟

父・丈之介(じょうのすけ)は 一足先に帰っていた。

大悟が黙って担いでいた人を おろした。

「誰だ?」

大悟が首を振る。

丈之介は、大悟がひろって来た人の顔を見て

驚き表情を示した。


巴の龍#3

ありがとうございましたm(__)m

最新作駒草ーコマクサー」
かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね


SIRIUSの小箱」ってなあに?
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巴の龍(ともえのりゅう)#4へ続く
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巴の龍#1 こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n6785ce9c010e

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