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元祖 巴の龍#18(地図付き)
呼ばれて振り返ると、菊之介が立っていた。
「何かあったのですか」
大悟は黙ってうつむいた。
「やはり、そうなのですね。
昼間、港から帰ってきてから何やら様子がおかしいと思うておりました。
わたしに隠し事をしないでください。
わたし達は兄弟となってまだ日が浅い。
幼い頃より一緒に暮らしていたものと違い、まだまだ分かり合えないことが多いと思うのです。
だからこそ、わたしに隠し事をしないでください」
大悟の眼の中に菊之介の悲しみが映し出された。
大悟は、この弟に黙っているわけにはいかない、と感じた。そして港で聞いたことを話すことにした。
「兄上、行きましょう。伯父上に会えるかもしれない」
「しかし良いのか。ロンのこと、カンフーのことは・・・」
「楽しかったですね。逃げていることなど忘れていました。
でも、これ以上ここにいることは、ロンやマーマに迷惑をかけてしまうかもしれません。
ちょうどよかったのではないかと・・・」
菊之介の目が少し濡れているような気がした。
翌日、大悟と菊之介はいっしょに山に入った。
大悟は弓を駆使していつもより多く獲物を獲り、菊之介は運ぶのを手伝った。
港でできるだけお金に換え、残りは干し肉にする準備をした。
すべてロンとマーマに置いてゆくものだった。
そして夜になって、サライを発ち西の来良に向かうと、ロンと母親に伝えた。
ロンは急なことで悲しんだが、母親は
「来良(らいら)の途中、甘露(かんろ)という町ある。
そこ新城治める、三つ口という者の領地。道中危険。
ロン連れていったらどうか」
と、言った。
これにはロン自身はもちろん、菊之介達も驚いた。
ロンがいなくなれば母親は困ることになる。まして危険であれば、なおさら連れていけない。
しかし母親は
「ロン、カンフーの達人。きっと役立つ」
と譲らなかった。
おそらくは母親は菊之介に畑を手伝ってもらったことや、大悟にいつも山の獲物をもらったり、それを売ったお金でなにかを買ってもらうことに、恩義を感じていたのだろう。
また、ロンは菊之介と旅がしたかった。
この国に来て、サライを出たことがないロンには、旅をするということ自体に魅力を感じていたのだ。
続く
ありがとうございましたm(__)m
地図(モデルは九州ですが、私の線が下手すぎる。2001年作成)
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そして、またどこかの時代で
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