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エンドレスヒール#13 -3.11

この物語はフィクションです。登場する人物、団体等は架空のものです。

3月11日(金)15時少し過ぎ。

何度も余震があって、雪の庭に立ちながら駐車場の車が大きく揺れるのを見ていた。
観音開きの食器棚から、たくさんの食器が落ち、飛散し、中に干してあった洗濯物に食器の破片が細かく白くなって降り注ぐのを見ているしかできなかった。

しかし、大きな余震を何度か耐えた後、和美は思い切って家に上がる決心をした。
前の室内用サンダル、おそらく破片が付いているかもしれないが、他に方法が見つからず、やっと足を乗せて、茶の間にはいる。

和美の家は、一階に和室が二つある。いわゆるリビングが6畳の茶の間になっている。
サンダルに足をかけ、和室に入ると、念のため、もう一枚靴下を重ねて履いた。

職場で履いている靴下。
介護職のため、汚れ方が普通の職場と違うので和美は仕事用の服、靴下もひとまとめにして一階においてあった。

その中から靴下を履き、和室を横切って玄関側の襖に見えるように作った引き戸を開け、廊下にある収納から、スリッパを2足出した。
たまたま元旦に両親の傘寿の祝いがあり、妹夫婦も来るので、客用スリッパを新しくしたばかりだった。

しかし、使っていた客用スリッパも壊れているわけではないので、何かの時につかえると思い、四足、収納に入れたままになっていた。
スリッパを履くと、足の裏に安心感が広がった。

さて、どうするか。
電気がつかないのだから、掃除機は使えない。
とりあえず、大きな破片を拾い、真っ白なキッチンを雑巾で拭こうか。

収納には、紙袋やらビニールの大きい袋やらたくさん入っている。
大きな破片は、丈夫なビニールの袋に入れることにした。

ブッブッ~~~!!
さっき、和室に置いた携帯が鳴っている。
携帯は、家族に通じたのか?
急いで和室に戻る。
息子からだ。

「こっちは無事だから、大丈夫。」
こっちは無事?
私は、宮城で起こった地震を伝えたはずなのに、「こっちは無事」って、どういう意味?

電気が止まり、テレビが付かないので何のことか全くわからない。
二度の震災を直下で被災した和美は、震災用被災グッズや、水、乾パン、懐中電灯、ロウソクといろいろ揃えてある。

寒い時の体の暖を取るアルミの体を覆うものや、トイレに置いてそのまま捨てられるビニール製のトイレグッズなど、様々なものが備蓄されていた。

しかし、肝心なものが和美の家には無かった。
電池があるのに、電池の使えるラジオ。まず必要な情報源になるものだ。
そして、ガスコンロだ。

反射式ストーブは買ってあったのに、コンロは買おうと思いながら、後手に回っていたのだ。

続く
2011年3月30日(水)

エンドレスヒール#1 -3.11

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