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トンニャン過去編#16チェリー・エンジェル(原題「天使チェリー」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

一九七三年秋 イギリス・ロンドン近郊
 
「ねえアン、今日からセカンダリースクールの四年生よ。
上学年になると、親も大人扱いしてくれるから、今までよりずっと自由に外出できるわね」
トーニは、同じ4Aのアンと話している。

「そうね、手始めにどこに行きたい?」
「う~ん、トムと二人きりでデートしたい」
「トーニったら、デートは二人きりって決まってるじゃないの」
トーニとアンが思わず笑うのと、授業開始のチャイムとが一緒だった。

 
ざわつきがおさまる頃、ミス・ザートが見慣れない女の子を連れて入ってきた。
「紹介するわ。今日から新しい仲間になる、チェリー・エンジェルよ」
「チェリー・エンジェルです。
転校してきたばかりで何もわかりませんが、いろいろ教えてください」
ミス・ザートが紹介した転校生は、長いブロンドの巻き毛に、目の大きい可愛らしい顔立ちをした少女だった。

 
「トーニ・・・あの子・・・」
「また、何か見えるの?」
アンは小さい時から人の見えないものが見える。
セカンダリースクールに入ってから、もう三年も付き合っているトーニは、アンの不思議な力を信じている。

「翼が・・・ある。」
「翼?」

 
「翼って、まさか天使って事、ないわよね?」
「わからないわ。あ・・・見えなくなった」
「見えなくなった?天使・・・ね。チェリー・エンジェル。まるで・・・」
トーニは、そうつぶやいて口をつぐんだ。
「翼・・・か。まるで・・・」
アンも同じようにつぶやいて口をつぐむ。二人は、何かを思い出しているようだったが、それを口にはしなかった。

 
「ハイ!チェリー。私はトーニ・バロン。こっちはアン・バスカントよ。
よろしくね」
「よろしく。トーニにアンね」
「仲良くできると嬉しいわ。せっかく知り合ったんだから。」
アンもチェリーにニッコリと笑いかける。

昼食を取りながら、次々と自己紹介が始まる。
昼食はクラスメイトだけでなく学校全体で一緒に摂るので、他のクラスものぞいてくる。

 
「おい、トーニ紹介しろよ」
トーニの後ろから4Bのトムとネッドが顔を出す。
「もう、転校生だからって物珍しそうにしないでよ。
チェリー、私のボーイフレンドのトム・クワイエットよ。
それからアンの幼なじみのネッド・グラウンド。」

「ボーイフレンドのトムと、幼なじみのネッド?」
「トーニ、言い方まぎらわしいよ。俺はトーニの近所に住んでるトム」

「そして、俺はアンの近所に住んでるネッドさ」
「トーニとトムが近所で、アンとネッドが近所なのね」

「その通り!!」
トムとネッドが声をそろえる。

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン過去編#16チェリー・エンジェル

※トンニャンシリーズの「〇〇の巻」noteなら、ほぼ五回。
これから時間のある時に、一挙に五話アップします。
たまにしかアップできないので、お時間のある時、ゆっくり一話ずつ読んでくださると嬉しいです。
今回は1970年代に描いた、トンニャン過去編「トム・クワイエット」の続きです。

トンニャン過去編#17へ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/ncf45cb443362

トンニャン過去編#15「トム・クワイエット」はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/n96c8a467eee0?magazine_key=me347e21d7024

#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d

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