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トンニャン最終章#4大天使ウリエル

※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「ウリエルの巻」のような意。トンニャンシリーズ最終章の最初の話です。
なお、この物語で「現在」「今」という場合は「日本民族が滅びてから約1000年後」のこと。つまり、今から何千年後かの未来です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

「ミカエル、ガブリエル。すまない」
涙を拭きもせず、今度はガブリエルの眼はウリエルに注がれる。

「ラファエルは、職務上とはいえパワーズ(能天使)を仕切る者。今まで、たくさんの天使を堕とし、堕天使にしてきた。その内の全てが悪魔となった。
魔界では必ずしもルシファーに従うものだけではなく、それぞれが自らの勢力を伸ばしていると聞く。
三大実力者、アスタロト・ベールゼブブはもとより、夜の女王といわれるブラックエンジェルと、力を持つ堕天使は多い。
この洪水の後始末が終わったら、ラファエルは、彼に堕とされた恨みを持つ悪魔たちの只中に、放り出されることになる」
 

これでいい。
「わたしは、光り輝く者ウリエル。この光で人々を救わなければ。ラファエルと共に行く。ラファエルを、悪魔たちの只中に、一人だけ堕とすことはできない」
さようなら、ガブリ・・・。
 

「待って!ウリエル。解ってるの?ラファエルは裏切ったのよ。あなたは、まだ裏切って無い。何故自分から堕ちる必要があるの?

この洪水は、かつてのノアの時代と同様に、人間たちが天帝を敬うことを忘れ、お互いを信じなくなり、
傷つけあい、戦い、殺し、殺され、戦争というあやまちを幾度となく繰り返し、
人を妬み、そねみ、ひがみ、陥れ、罪を罪と思わず、
努力することも忘れ、快楽にふけり、楽しみのみに興じていたから、
どうしようもない世界の乱れを、正すすべがなくなった、最後の手段なのよ」
ウリエルは首を振った。

 
「かつてのノアの洪水。今と我々の姿は変わっていない。しかし、まだ子どもだった。本当の意味、人間を滅ぼすという意味も解っていたのか。あのソドムとゴモラも、今は胸が痛い。全ての人々を焼き払って良かったのか」
「やめて、ウリエル。自分の言ってることが解っているの?あなたは天帝を信じただけ。天帝に間違いはない。そう、信じたから、遠い昔、天帝と悪魔の戦いで、私達は雌雄を決して戦った。我々の正義、我々の勝利を信じて」

「しかし、ルシファーは堕ちた」
「ルシファーのことと、今回のことは違うでしょう?」
「違わない。ルシファーは裏切った」
 

「一つの魂が二つに分かれて生まれた双子。対の天使だったミカエルに、ミカエルの剣で、ルシファーは翼を射ぬかれ、堕ちて行った」
「それは、ウリエル。だから、違うことでしょ。ミカエルに、あの時のことを言わないで」
「違わない。ルシファーが最初に気づいた。命は、我々も悪魔も、人間も、同じく重いものだと。ルシファーは、最初に気づいたんだ」
ウリエルは、フッと笑みを浮かべた。
「知ってたさ。命の重さの大切さなど、この光の天使ウリエルが、人間に説いてまわったことじゃないか。いまさら、こんな当たり前のことに気づくなんて」
 
気づいていた。気づかないふりをした。我々は光で善。悪魔は闇で悪。人間達は、我々が守るべき者たち。この定義が崩れない限り、自分は絶対正しいと信じてきた。

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン最終章#4大天使ウリエル

※トンニャンシリーズの「〇〇の巻」noteなら、ほぼ五回。
これから時間のある時に、一挙に五話アップします。
たまにしかアップできないので、お時間のある時、ゆっくり一話ずつ読んでくださると嬉しいです。

【「炎の巫女/阿修羅王」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】

次回トンニャン最終章#5 ウリエルへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n623778f28c45

前回トンニャン最終章#3 ウリエルはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n2085c7485657

トンニャン最終章、最初から読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/mb128933fa182

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