見出し画像

巴の龍 #2

手紙は兄のように育った兵衛(ひょうえ)

書いたものだ。

葵(あおい)が半分ほど読み終える頃、

洸綱(たけつな)は へなへなと座り込んでいた。

床に手をつき 目もうつろだ。

はかまわず読みすすみ、最後まで読み終えると

手紙を床に 叩きつけた。

そのしぐさに 思わず顔をあげる洸綱

「父上、こんなこと書かれて黙ってるおつもりですか?」

の声は怒りにふるえている。

その様子に洸綱は ゴクリとつばを飲み込んだ。

「ふざけるんじゃないよ。

長々育ててもらったお礼なんか書き連ねて。

期待されても涼原(すずはら)の家を再興できないだの、

三つ口定継(みつくち さだつぐ)を倒す自信がないだの、

挙句に この私を幸せにする器量がないときた。

だから でていくだと。

男の風上にも おけない。」

洸綱の怒りが頂点に達してゆくのを感じた。

この娘が怒り出すと、昔から手がつけられなくなる。

桔梗(ききょう)・・・。」

洸綱は妹の名前を口にした。

桔梗は兵衛の母であり、このによく似て男勝りで

太刀の腕も男顔負けだった。

先のまけいくさで離ればなれなったのだが、

その時 洸綱は妻を失い娘の葵と兵衛を連れ

命からがら この来良(らいら)の国へと逃げてきたのだ。

は その桔梗に 性格もよく似ていた。

「父上!]

強い口調に我に帰ると、鬼の目をした葵が立っていた。

「私、兵衛を追います。」

まだ洸綱は現実を受け入れられないのか、

の言っていることが 即座に理解できないでいる。

「あの・・・いくじなし!

絶対 許さない。

地の果てまでも追いかけて行ってやる。」

そう言いながら ニヤリとが笑った時、

我が娘でありながら 洸綱は背筋が寒くなり

心底 兵衛に同情したくなった。


巴の龍#2

書籍になっていない作品を連載しております。
最後までお読みいただきありがとうございますm(__)m

最新作駒草ーコマクサー」
かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね


SIRIUSの小箱」ってなあに?
過去作品今までのメルマガ HP/リザストはこちらから

巴の龍(ともえのりゅう)#3に続く
https://note.com/mizukiasuka/n/nf0627c06f39bhttps://note.com/mizukiasuka/n/nf0627c06f39b


巴の龍#1 こちらから

https://note.com/mizukiasuka/n/n6785ce9c010e




もしよろしければ、サポートしていただけると嬉しいです。いつも最後までお読みいただき、ありがとうございますm(__)m(*^_^*)