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元祖 巴の龍#37

「この城は自然の地形をそのまま活かして作られています。南に門があったのはわかりますね」
菊之介はこくりとうなずいた。

「あの南門はかなりの高台に位置しています。
そして南門から西に岩場があり、石牢が並んでいます。

もちろん自然のもので、冷たく時々水も沁みて、女の義母上にはつらい牢獄生活となっているでしょう。
しかもここは平城、かなりの広さで或る故、石牢に行くまで迷わぬように気を付けなされ」

桐紗はそこまで言うと、震える指で菊之介の頬にふれようとしたが、思い直したのか、さっと手をひいた。
「大悟様が戻ってきます。私のことは、まだ言わないでください」

菊之介が振り返ると大悟が帰って来ており、また桐紗の方を見ると、すでに姿はなかった。


菊之介と大悟はいったん石垣から城の外に出て、外側から石牢に入ることにした。城の中を歩き回るのは危険だと判断したのだ。
城の南西とだいたいの目星をつけて、もう一度石垣に登ると石垣の上よりそのまま続いて岩場があった。

菊之介も大悟もそっと岩場に身を移すと、かすかに人の声が聞こえた。
足元に耳を寄せて聞き入ると、やはり人の声に間違いない。

どうやらこの下が石牢になっているようだ。
静かに下を覗くと、牢番らしき男が二人立っていた。

菊之介と大悟は目配せして一気に飛び降りた。
ふいをつかれた牢番が、声を出す前に口をふさぎ、当て身をくらわせて気絶させた。

「桔梗殿はおいでになりますか」
菊之介は小さな声で石牢の人々に声をかけた。あえて母と呼ばなかったのは、ほかに囚われている者に、こちらの名を知られたくなかったからだ。

桔梗はわたしです。どなたさまでしょうか」
懐かしい母の、だがしわがれた声が聞こえた。

菊之介と大悟は声のする石牢の前まで来て、菊之介が菊之介が小さな木切れに火を灯した。それは見る影もなくやせ細り、しかし間違いなく母・桔梗だった。

桔梗は菊之介の顔をしげしげと見つめていたが、ふっと涙を流した。
生きていたのですね。よくここがわかりましたね」

「義姉上に教えてもらったのです。新城でもここでも、助けてもらいました」
桔梗の顔が曇った。


「桐紗が。新城で私が捕らえられる時にかばって・・・。そんな・・・!」

続く
ありがとうございましたm(__)m

「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ

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