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元祖 巴の龍(ともえのりゅう)#36

菊之介は近くの岩に腰を下ろし汗を拭いた。大悟も仕方なく適当な場所に座った。菊之介の視線の先に菊の花があった。

「もう、菊の季節か」
菊之介はひざまずいて花にふれた。ふれた周りにススキが生い茂っている。

ススキが風にそよいで菊之介の顔をくすぐってきた。振り払おうと頭を振ると、ススキの間に石垣が見えた。

菊之介は立ち上がってススキの中に分け入ると、そこには城にふさわしくないほど低い、しかしやはり城らしく広く大きい屋敷があった。

「兄上、ありました」
大悟がバタバタと走って来た。

「あれが城?大きい屋敷にしか見えんぞ」
「おそらく、山の中で敵から見つかりにくく作っているのではないでしょうか」
「あれが城ね・・・」


菊之介と大悟は夜を待った。

しかし新城と違って中の様子はまるきりわからない。
慎重に慎重を期さねばならない。

菊之介は、城の南と北に門があるのでその近くをさけ、東の方から石垣を登ることにした。一か八かの賭けのようなものだった。

東方から庭に下りると、新城の時のように別れてさぐることになっていた。ただし危険なので、半時後に落ち合う約束だ。大悟と別れると、また新城の時のように、頬に涼やかな風を感じた。

まさかと思って横を向くと、はたして桐紗が微笑んでいる。
「義姉上、どうしてここに」

「菊之介、まだ義姉上と呼ぶのですね。癖になってしまったのでしょうか」
「いや、それよりなぜここにいるのですか」

「何か菊之介の力になれればと思い、ついて参りました。父を止められず、義母上を囚われの身にさせてしまった。せめてもの詫びです」

「詫びだなどと。義姉上は三つ口の父のほんとうの娘ではありませんか。わたしとは違います。何も義姉上のせいではないのですから」

「うれしい。そう思ってくれるのですね。安堵しました」
桐紗は子供のように微笑んだ。それから城の南方を指差した。

「この城は自然の地形をそのまま活かして作られています。南に門があったのはわかりますね」

続く
ありがとうございましたm(__)m

「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ

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