元祖 巴の龍#84
「三つ口定継、成敗に来た。母上を返せ」
兵衛が口火を切った。龍は面白そうに声を上げて笑った。
「何がおかしい。母上はどうなったのだ」
大悟も声を上げた。
「もう、おまえたちの母はおらん。いや、三つ口定継もいない」
「どういうことだ。おまえが定継ではないのか」
菊之介も言った。龍は不敵に笑いをうかべた。
「わしはこのロンワンの龍王じゃ。今から二十年前、三つ口定継は、この国を支配する力を得るため、このわしに魂を売ったのじゃ。
わしは定継に妖魔の力を与えた。自らの妖魔の力と、他の妖怪を操る力を与えたのじゃ。
じゃが、奴はその力に溺れ、最後は自分の肉体までもわしに捧げおった。
そして、このわしと一体となり惚れた女まで、この身に取り込みおった。
肉体をわしに与えた時点で、定継は逆にわしに取り込まれてしまったのじゃ。じゃから、定継もあの桔梗という女子も、わしの体の中に溶け込んでしまった。もうこの世にはいない」
菊之介も大悟も兵衛も、すぐに言葉が出なかった。何をどうすれば良いのか、判断がつきかねたのだ。龍王は三人を見比べて話を続けた。
「定継はよく働いてくれた。この国を滅ぼし、わしのものにするのに、手間をかけずにすんだ。
今、この国に天変地異が起こるぞ。人々は逃げ惑うが、逃げる場所などない。わしに従う者だけが、生き残れるのじゃ」
龍王がそこまで言った時、やっと菊之介が太刀に手をかけた。
「定継も亡く、母上も助けるすべ無し、とすれば我らがすることはただ一つ、この国を守ること」
「このまま、おまえの好きにされてたまるか」
大悟も矢を取った。
「我らのすべきことは、邪悪な龍王を倒すことのみ」
兵衛が太刀を抜いた。三人がそれぞれ自らの武器で龍王に狙いをつけた。
その時また彼らの体から巴の龍の光が放たれた。
涼原を背負う兵衛は背中に龍を、力強き剛の者、大悟は右腕に龍を、そして心優しき菊之介の胸に龍の紋章がうかびあがり、一斉に眩い光を放った。
ところが、龍王は心地よさそうに笑った。
続く
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「駒草ーコマクサー」
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