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エンドレスヒールⅡ-3.11 #10あさみの場合

「お久しぶり。ご無沙汰しています。」
「・・・元気・・・だったの?」
「いろいろあってね。連絡できなくて・・・。」
桃井の言葉が途切れる。

「そう・・・。連絡が無くなったから、何かあったか、忙しすぎるのかと、思っていたのよ。」
「う・・ん。家のこととか・・・いえ、実家のこととか親のこととか、いろいろあって、連絡できなくなってしまったの。」
「そう、大変だったのね。」
あの時40代。10年の時を考えれば、親のことで何かあっても おかしくない。

「私ね、今、また、N市の図書館でバイトしてるの。」
「え?バイト?」
「そう。嘱託が5年で任期満了になってから、仕事も変えたりしたけど、たまたま今、またバイトしているの。」
桃井は、少し言葉を切った。

「あの・・・。図書館で仕事してるとね、水月(みずき)さんのこと、思い出してね。
私ね、この8月でバイトは終わるの。でも、仕事しながら、いつも水月さんのこと、思い出していた。
私の都合で水月さんとのお付き合い、自分から切ってしまったけれど。
水月さんのような誠実な人との関係、どうして切ってしまったんだろう、と思い出されてならなくて。」

思いもかけない桃井の言葉だった。
浅海は、正直、本当は切られたのかもしれない、との思いはあった。
何か、桃井に対してしてしまったのか。しかし、本人から年賀状すら来ない以上、もう無理なのだと、遠い昔に諦めてしまっていた。

「水月さん、今、何の仕事しているの?」
「私、今。求職中なの。実は、ヘルパーの資格取ったの。
他にも、それに近い障害者や介護関係の資格を取ったから、今、福祉施設関係野仕事を探してるの。」
「そう。やっぱり水月さんだわ。凄いね。でも・・。」
でも・・・・?

「図書館に履歴書、入れてみない?」
「え?もう一度?」
「そう、もう知ってる人、あの頃の上司はみんな定年になっていないの。同じところに また履歴書っていれずらいかもしれないけど、でも、ほとんど新規扱いできっと また仕事できるよ。」

図書館?
全く考えていなかった。
福祉施設。その時の浅海には、それしか見えていなかった。

2011年6月10日(金)
続く

エンドレスヒールⅡ-3.11 #10あさみの場合


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