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巴の龍(ともえのりゅう)#11

その嘲笑うかのような兵衛(ひょうえ)の眼と

少年の眼が交差した時、少年はカッと目を見開いた。

「おまえ、やる気だな!」

気がつくと兵衛は少年に突き飛ばされていた。

兵衛はすぐさま太刀を抜き、臨戦態勢に入った。

少年もゆっくりと腰の太刀を抜いた。

兵衛はジリジリと間合いを詰めてゆく。

ヒュンと音がして、ガチッと太刀が触れあった。

兵衛が振り下ろしたのを、少年が止めたのだ。

だが、戦いは兵衛ペースで進んでゆく。

少年はただ受け身をとるのだけで、精一杯だ。

二度、三度と太刀がかみ合い、

何度目かの時に また兵衛が笑った。

「へぇ、意外とやるじゃないか。

でも、これで・・・終わりだ!」

兵衛が思いきり太刀を振り上げると、

少年の太刀が宙を舞い、

少年は転がって倒れた。

グサリ!

少年の倒れた顔の横に 兵衛の太刀が刺さり、

ほんの少し、頬をかすった。

「これで、おあいこだな」

兵衛は そう言って太刀をおさめた。

そして 今度は優しく笑った。

「間違って人に怪我させた時には、

素直に謝るもんだぜ」



丈之介(じょうのすけ)

少女に粥を食べさせていた。

息子の大悟(だいご)は今日一人で狩りに出ている。

何度か口に運ぶと、

「自分で」

と 少女が言った。

ここへ来て 初めて口をきいた。

「もう、話せるのか?」

少女は小さくうなずいた。

丈之介は少女が食べ終わるのを待って、

また寝かせた。

「少し、聞いてもいいかな?」

丈之介の言葉に 少女はこくりと首を動かした。

「まず・・・そうだな。名は何という?」

「・・・菊葉(きくは)と申します」

丈之介は少女の顔をじっと見つめながら、

ふところから鍔(つば=刀の鍔)を出した。

少女は驚いて起き上がった。


巴の龍#11

ありがとうございました(*´▽`*)

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巴の龍#12へ続く
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巴の龍#1 こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n6785ce9c010e

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