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エンドレスヒールⅡ-3.11 #8あさみの場合

浅海がN市の図書館からアルバイトの誘いがあったのは、半年前の出来事にさかのぼる。

半年前、2010年8月後半。

「桃井です。」
突然の電話だった。
桃井?
「以前、N市の図書館で一緒に働いたことのある、桃井です。」
図書館?
浅海は、古い記憶を思い起した。

確かに十年ほど前、浅海はN市の図書館でアルバイトをしたことがあった。
たまたま仕事を探していた時に、
「役所関係は履歴書を入れておくと、声がかかる時がある」
との情報を得て、N市の人事課に履歴書を出したのだ。

図書館と希望したわけではないが、それから約半年後、お声がかかった。
初めての図書館での短期アルバイト。初めから半年と決まっているバイトだった。
桃井とは、そこで知り合った。当時9人いたバイトは、始まる時期も終わる時期も違っていて、毎月誰かが任期満了となり、誰か新しい人が入って来ていた。

桃井は、浅海より一ヶ月後にアルバイトに入った。
笑顔が綺麗な人で、あたりが柔らかいが、自分というものをしっかり持っている人だった。
しばらくして、図書司書の資格を持っていた桃井は、嘱託という5年契約の職務に抜擢された。

N市の図書館なので、基本職員は公務員。
しかし、図書館採用で無い限りは他の市の職場同様転勤がある。
嘱託は図書司書を持ってないとなれないので、専門知識を有する。
当時は40代前半だったろうか。
浅海よりいくつか年上の桃井は、嘱託として違う部署で働き始めた。

そのため、浅海と桃井がバイトで一緒に働いたのは、おそらく三ヶ月くらいだったのではなかったか。
しかし、部署が変わっても何か通じるものがあったのだろう。
桃井と浅海の交流は、浅海がアルバイト満了まで続き、その後桃井の家にお誘いを受け、遊びに行ったこともあった。

図書館を任期満了後、浅海には最も忙しい時期がやってきた。
長男 大学・次男 高校・三男 中学。
今後のことを考えても、本気で働かないと とても三人の子を大学にはやれない。
浅海は、いくつかの面接を経て、一部上場の利益を追及する 一般企業に契約社員として就職した。

2011年6月8日(水)
続く

エンドレスヒールⅡ-3.11 #8あさみの場合


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